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大都、BtoB向けのEC事業で「建設業界のアマゾン」をめざす

プロショップ

DIYに特化したEC「DIY FACTORY」を運営する大都(大阪府/山田岳人社長)が開設したBtoB向けの「トラノテ」。工具や塗料などの住関連商材を扱う、建築職人の需要に照準を合わせたサイトだ。「MonotaRO(モノタロウ)」はじめ有力サービスが存在するなか、独自の取り組みで市場開拓をめざす。

BtoB向けECを23年2月に開始

 大都の創業は1937年、大阪市内で大工道具の卸売を始めたのが興り。90年代にはホームセンター(HC)とのビジネスが売上高の半分を占めたが、それら取引先の大企業化に伴って中間流通業者の存在意義が薄れ、業績は縮小していく。

 厳しい状況下で2002年、活路を見いだすため進出したのがEC事業だ。「楽天市場」への出店を皮切りに、「ヤフーショッピング」「アマゾン」と順に広げた。自社サイト「DIY FACTORY」も立ち上げ、多くのユーザーを獲得するに至る。大都の23年12月期の売上高は70億3000万円で、成長を続けている。

 以来、長らくBtoCで事業展開し、DIYの分野では一定の知名度がある大都だが、昨年2月、新サービスとしてBtoB向けECサイト「トラノテ」を開設した。流行の影響を受けやすいBtoCビジネスに対し、BtoBは安定した需要があるため成長戦略が描きやすいとの判断だった。

23年2月に立ち上げたBtoB向けEC「トラノテ」。24年2月末現在の会員登録企業数は約2万社に上る

 ただ同分野には「モノタロウ」「MISUMI(ミスミ)」といった既存の有力サービスが立ちはだかる。決して簡単に攻略できる市場ではない。

大都の山田岳人社長

 これについて山田社長は「当社にはBtoCビジネスで構築してきたプラットフォームがある。またECの浸透で、利用者の購買行動は確実に変化しており、今なら大手とも真っ向勝負できると考えた」と明かす。

 さてトラノテの概要に目を向けると、販売するのは工具、塗料、金物、空調電設資材・照明器具などの住関連商材。当初、245万点でスタートした取扱商品数は、その後、プロ用の道具を扱うメーカー、商社を積極的に開拓した結果、24年2月末現在では387万点にまで広がっている。

 これまでDIY向けサイトには無関心だったプロ向け商品のメーカーの多くが、新サービスに強い関心を寄せているという。

 サービス開始以降、利用者数は順調に伸長し、24年2月末現在の会員登録企業数は約2万社に上る。

 業種別の内訳では「建設業・工事業」がトップで30.8%。次いで「製造業」16.1%、「卸売業・小売業」15.8%と続く。現在、HC各社が力を入れるプロショップの顧客層と重なる部分も大きい。

 山田社長は、「さらにサービス内容を強化し利用者を拡大。『建設業界のアマゾン』をめざしたい」と意気込みを見せる。

「持たない」ことを強みとする

 プロ市場の開拓に乗り出した大都。既存サービスとの違いを、山田社長は次のように説明する。「モノタロウをはじめとする大手ECは、巨額の投資で建設した物流センターに在庫を抱え、ビジネスを行っている。しかし当社は『持たない強み』を生かしたサービスにより支持を獲得していく」。

 トラノテは、職人が最も重視している「品揃え」「納期」「価格」を強化しているのが特徴である。

 このうち「品揃え」は、BtoCで構築したプラットフォームを活用、有力サービスに負けない水準を誇る。大阪市内にある自社物流センターにある在庫は1.3万点だが、これにメーカー、商社が持つ在庫とひも付けことで、トラノテのサイト上に49万点を掲載している。

 また実在庫金額は現状、2億7000万円。これにメーカー、商社との連携分を加えると、利用客からは351億円分が見えていることになる。この数値は決して大手に見劣りしない。

 「納期」については「クロスドッグ」という効率的な手法を採用し、短縮に努める。一般に大手の既存サービスは、入荷した商品は検品後、いったん物流センター内の棚に格納する。だが大都の場合、入荷検品のタイミングで送り状を発行、そのまま出荷する。つまりセンターで一時保管しないため、取寄商品でも翌日、早ければ当日に出荷できる。

 さらに今後は、自社物流センターを介さず、全国各地にある取引先のセンターから直接発送する手法をとることで、さらに短納期化する計画だ。

 また物流センターへ投資しない分、販売価格は既存サービスより安く設定することができる。独自開発したプライシングエンジンも使用し、競合サービスの価格を常に把握した上で値付けする。実際に販売している商品は、大手サービスより数割安いものは少なくない。

 こうした魅力的な「品揃え」「納期」「価格」は、メーカー、ベンダーとの強い連携抜きには語れない。山田社長は、「当社はプライベートブランドをつくらない方針で、それを取引先に表明している。つまりメーカーさまの商品を売るという姿勢を明確にすることで、信頼をいただいている」と話す。

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システム内製化でスピード対応

 「持たないこと」を武器に、プロ市場の開拓をめざす大都だが、自社の競争力につながる分野は内製化している。それはECサイトを運営するバックシステムだ。

 21年、ベトナムに子会社の「DAITO VIETNAM」を設立。現地で優秀なエンジニアを抱え、システムを開発している。前述のプライシングエンジンのほか、メーカーやベンダーが直接、商品の登録ができる仕組みも構築。また物流関連のシステムも、自前の組織だからこそ、きめ細やかに調整できる。

ベトナムに現地法人「DAITO VETNAM」を設立。エンジニアを採用し、プライシングや物流システムを内製化している

 興味深いのは、ECサイトを小売業と見立て、より集客力ある「売場づくり」にも取り組んでいる点だ。購買頻度の高い、集客力を発揮する商品を目立つ場所に配置するなどの仕掛けづくりに注力する。

 たとえばシリコン系シーラントのコーナー。当該ページに進んで最初の位置にお薦め品や新商品を並べるなど、「カゴに入れたい」と思わせるような配置を追求。利用者にとっては最初に見た「売場」が安い、高いを判断する基準になるため、とくに神経を使っている。

 大都では「売場」の変更は毎日行っている。もしバックシステムを外部へ委託していたら、このような高頻度での売場の見直しは難しい。内製化しているからこそ、迅速な対応が可能で、自社でノウハウも蓄積できる。

 今後も、トラノテはサービスを充実させ、利用拡大を図る方針だ。その一例として、物流センターでの商品引き渡しが挙げられる。現場仕事で必要なものを、すぐに取りに行きたいというニーズは一定数ある。同社では1年以内には実現する計画で、準備を進めている。

 また「パンチアウト連携」にも対応する。これは企業の購買管理システムとトラノテを連動させるサービス。利用客にとっては安全でスムーズな購買環境を整備できる仕組みで、モノタロウはじめ大手のサービスはすでに導入している。大都も追随することで企業の大口ニーズの取り込みをめざす。

 山田社長は、「まだプロ市場の開拓余地は大きい。利便性の高いサービスにより、利用者を増やしていきたい」と抱負を口にする。

 

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