出店で売上5倍に!中川政七商店、工芸メーカー向けECモールの仕組みとは
メーカーが享受する3つのメリット
1つめのメリットは、サイト制作と維持の難しさが解消されることだ。例えば商品テキストは、中川政七商店のスタッフが現地に足を運び、工房の歴史や産地の風景を含めた紹介を書くことを心がけている。それも、三人称で。その理由について中武氏は、「自分よりも他者が『ここの商品はここが良い』と伝えるほうが、説得力は大きい」と解説する。一方で写真については、スタイリングにもこだわり、「実際の活用シーン」がイメージできるように撮影する。
この両方を必ず入れることが特徴で、どちらにも、これまで自社製品で積み重ねたスキルが活きている。メーカーの希望で提供写真を使用することもあるが、ごく少数。コンテンツのクオリティにこだわることで、リピーターを増やしたい狙いだ。
2つめのメリットであり、最も期待されるのが集客力だ。ECサイトは立ち上げだけなら簡単でも、それを収益の柱に育てるのが難しいからだ。しかも、小さなメーカーには運営に割くリソースもない。さんち商店街は71万人の会員が訪れる場所であり、会員にメルマガやLINE配信も行っている。「配信の開封率は平均30~35%と、一般的なものより高い。顧客との関係ができている分、リーチしやすいルートに情報を乗せられている」(中武氏)
3つめのメリットは、発送や顧客対応の手間と物流コストを、メーカーに代わって中川政七商店が負担することだ。商品は中川政七商店が仕入れる形のため、出店ブランドは倉庫に納品して作業終了。「常時オリジナル商品3000種類を抱える倉庫と物流システムを活用すれば、発送も問い合わせ対応も、ほぼ負荷なく可能だ」と自信を見せた。