ブランドリユースのコメ兵が実店舗拡大へ 営業自粛と巣ごもりの“二重苦”でも勝算はあるのか
1年以上続くコロナ禍で、小売業界に大きな変革が訪れている。対面の接客を避ける消費者が増えたことで店舗の売上が下がる一方で、消費者の巣ごもりが影響しEC利用が増加傾向にある。
そんな中、ラグジュアリーブランドの買い取り・販売に強みを持つブランド品リユース大手のコメ兵ホールディングス(以下、コメ兵)は、実店舗拡大へと舵を切った。AIを使ったブランド品の真贋(しんがん)鑑定技術を導入することで、商品の買い取りをスムーズにするだけでなく、取引の透明性を強化する計画だ。しかしなぜ今、大量出店に踏み切ったのか。6月に行われた「コメ兵×K-ブランドオフ 合同戦略説明会」から、同社の持続的成長戦略を考える。
3年で120店舗規模に拡大
コメ兵は、今年の6月、年間30店舗を3年連続で出店し、既存の28店舗と合わせて120店舗規模にする考えを示した。コメ兵傘下のブランドオフでは国内のフランチャイズ店舗を3年間で現在の約7倍となる100店舗規模達成をめざす。
コメ兵の代表石原卓児氏は、「お客さまの生活圏と生活導線上にコメ兵があることを目標にしたい」とし、足元商圏への出店をめざす。出店するのは約20坪の買い取り専門店に限定し、当面は店舗運営の費用がかさむ大型店舗の出店は控えるという。
同社の強みは、120万件ほどの顧客データを保持していることだ。事前に、イベント買い取りを繰り返し、「モノ」を持っている富裕層を探り、実績のあるエリアに自社のマーケティングデータと照らし合わせた上で買い取り専門店を展開していく。ものを無駄にしないサステナブルな買い物をサポートする同社のキーワードは、「いつもの」「近くの」。ターミナル駅周辺だけでなく、お客の生活圏や商業施設様へ出張買い取りも強化していく。
なぜいま、オフラインに投資するのか
「コロナ禍で厳しい面もあるが、国内のリユース市場は今後も成長し、2025年までには3兆2500万円規模に拡大することが見込まれます」と、石原氏の表情は明るい。
「中古市場データブック2020」によると、日本のリユース市場規模は9年連続で右肩上がりに成長している。2018年度の2兆1880億円に達し、中でもオンラインの売上の増加が目立つ。
「これまでリユースに触れる機会がなかった人が利用しはじめたことで、利用者の裾野が広がりつつあります。例えば、生産が終了したブランド品を『中古でもいいから』と求める人が増えたり、コロナを契機にサステナブルな考え方が浸透しつつあるのも、リユース市場拡大の追い風になっています」(同氏)
日本の人口総数は減少していくものの、これまで利用率が低かった若年層、高齢層の利用が増えることでリユース経験者の人口は拡大していく見通しだ。
中古品の売買を行うリユースビジネスにおいて、仕入れは生命線といえる。「買い取りを強化しないことには、我々のビジネスで大きなスケールは見込めない」と石原氏。競合他社との“買い取り合戦”を勝ち抜くためには、消費者が気軽にモノを売れる環境を整備すること、取引の透明性を強化することが極めて重要だ。