日本初、プラントベース食品の認証制度が確立 消費者への認知拡大と選びやすさをサポート

ダイヤモンド・チェーンストア編集部 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア)

健康志向の高まりや環境への配慮から、植物由来の原材料を使用したプラントベースフードを選ぶ消費者が欧米を中心に増えている。この流れを受けて2021年10月、日本でもプラントベースフードを普及させたいとして一般社団法人Plant Based Lifestyle Labが設立された。

同法人の取り組みから見えてくる、プラントベースフード市場の現在地についてレポートする。

プラントベースフードが支持される2つの理由

 プラントベースフード そもそもプラントベースフードとは、英語の「plant-based food」を語源とした言葉で、動物由来の原材料を配合せず、植物由来の原材料を使用した食品全般のことを指す。代表的なものとして、大豆ミートや植物性ミルク(豆乳、アーモンドミルク)などがある。

「プラントベース食品」の認証商品
左から「ナッツとベリーのオートミールクッキー」オイシックス・ラ・大地、「Ever Egg130g」カゴメ、「G R E E N KEWPIE 植物生まれのマヨネーズタイプ」キユーピー、「冷凍かるカツM」エヌ・ディ・シー

 近年、欧米を中心にプラントベースフードに注目が集まり、市場規模は年々拡大傾向にある。その理由として以下の2 点が挙げられる。一つは、プラントベースフードは低脂肪・低コレステロールである上、食物繊維やビタミン・ミネラルが豊富という点だ。腸内環境を整え、生活習慣病のリスクを減らすのに役立つことから、健康志向の高まりを背景にプラントベースフードを選ぶ消費者が増えている。

 もう一つは、プラントベースフードの生産は動物性食品を生産する畜産業に比べて、二酸化炭素排出量や水資源使用量が大幅に少なく、環境負荷を軽減するという点だ。気候変動や世界人口の増加に伴い、食資源危機が叫ばれるなか、プラントベースフードはサステナブルな食材原料とみなされている。

 加えて、大規模な工場畜産は動物福祉の問題もはらんでおり、持続可能な地球環境を維持していくためにも、プラントベースフードが支持されているというわけだ。

産官学が協働して、普及を図るP-LAB設立

 こうした流れを受け、日本でもプラントベースフード市場は広がりをみせている。【図表1】にあるように、右肩上がりで市場規模は伸長し、2025年には1000億円を超えると予測されている。

 日本におけるプラントベースフードの認知拡大に貢献しているのが、一般社団法人Plant Based Lifestyle Lab(プラントベースライフスタイルラボ、以下P-LAB)だ。パソナグループ、不二製油、カゴメの3社によって、21年10月に設立された団体である。

【図表1】2025年には1,000億円超えの規模まで拡大する予測!

 人材ビジネスを展開するパソナグループが「食」の団体に関わっていることに意外性はあるが、同グループでは健康で心豊かな生き方・働き方ができるウェルビーイングな社会の実現をめざしており、その一環として「食」を通じた取り組みを淡路島で展開している。

 それがきっかけで不二製油と連携するようになり、「もっとプラントベースフードを普及させたい」という同社の想いに共感。「自然を、おいしく、楽しく」をブランド・ステートメントに掲げるカゴメも不二製油を通じてプラントベースフードの価値を理解し、P-LABの設立に至った。

 P-LABでは「『地球と人の健康』のために私たちができることを今からやろう」をスローガンに、「地球と人の健康」および「社会の持続的な発展」に向け、プラントベースフードの普及を中心に、産官学が協働しながら、プラントベースが当たり前のおいしい楽しいヘルシーなライフスタイルを広げ、根付かせる活動を行っている。

 具体的には、プラントベース商品の共同開発と食生活への提案、プラントベース関連情報のインフラ構築、生活者を対象にしたプラントベースフードの意識実態調査・分析などがある。設立当初、会員企業は15社だったが、25年7月現在では正会員が34社、賛助会員が19社の計53社と年々増えている。

豊かな食生活を持続可能なものにするために

 P-LABではプラントベースフードの普及に取り組んでいるが、それは動物性食品を否定し、植物性食品に移行させることを意味するものではない。そのねらいは、肉も魚も食べる豊かな食生活を持続可能なものとして未来につなげていくことにある。

 つまり、プラントベースフードを食の選択肢の一つとして普段の生活に取り入れていくことで、人も地球も持続的に健康になることをめざしている。「食」が中心ではあるものの、P-LABではライフスタイル全般にプラントベースの考え方を展開したいと考えており、だからこそ法人名の中に「ライフスタイル」という言葉が入っている。実際、P-LABの会員には食品メーカー以外の企業も名を連ねており多種多様だ。

 プラントベースフードと類似した言葉にヴィーガンやベジタリアンがあるが、P-LABではこれらの関係性を【図表2】のように定義している。ヴィーガンは動物性食品を排除する食生活を送る人たちのことであり、ベジタリアンは一部の動物性食品は許容しながらも動物性食品を排除する食生活を送る人たちだ。

 これらに対し、プラントベースライフスタイルとは、動物性食品を完全に排除するわけではなく、ヴィーガンやベジタリアンを否定するものでもない。植物性食品を取り入れた生活を指すものであり、包括的にとらえているのが特長だ。だからこそ、プラントベースフードは食の自由度が高く、取り入れやすいものといえる。

【図表2】P-LABが提唱する「プラントベースライフスタイル」

認証ロゴマークにより、安心して選べる環境づくり

 プラントベースフード市場が拡大する一方で、消費者はどのようにしてプラントベースフードを選べばいいのか。この課題を解決するため、P-LABではプラントベースフードの基準を設けるべく検討を重ねた結果、原料の選択や製造プロセスに関する基準を明確化した。

 そのうえでP-LAB内に独立した認証事務局を設け、第三者による審査を通じて評価を行うという第三者認証プロセスを確立。2025年3月より「プラントベース食品」の認証制度を施行した。認証を取得した事業者は【図表3】のような認証ロゴマークを使用することが可能となり、商品やサービスの価値を伝えるツールとして活用することができる。

【図表3】 認証ロゴマーク

 この認証制度によって、消費者に対して「プラントベース食品」の認知拡大をいっそう図るとともに、安心してプラントベース食品を選べる環境が整った。現在、8社・32品が認証を取得しており、審査中の商品もある。

 健康志向やサステナビリティへの関心が高まり、プラントベースフード市場には追い風ではあるが、価格面や味の課題が少なからずある。P-LABではこうした課題の解決にも取り組みながら、プラントベース食品市場の裾野拡大に寄与していきたい考えだ。

記事執筆者

ダイヤモンド・チェーンストア編集部 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア

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