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第2次ブーム到来!? セブン&アイ買収提案で注目集まるMBO、そのメリット・デメリットは?

兵藤 雄之
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国内流通トップ企業、セブン&アイ・ホールディングス(東京都:以下、セブン&アイ)への買収提案が注目を集めている。カナダのコンビニ大手、サークルKを世界展開するアリマンタシォン・クシュタール(Alimentation Couche-Tard:以下、ATC)は、セブン&アイの米国事業を主眼に、7兆円規模で買収をねらう。その対抗策としてセブン&アイ創業家(同社代表取締役副社長の伊藤順朗氏および同氏が関係する会社である伊藤興業)は、特別目的会社を設立しセブン&アイに対してTOB(株式公開買付)を行い非公開化(上場廃止)するという、MBO(経営陣による買収)に近いかたちでの買収提案を行ったとされ、総額9兆円規模との報道も出ている。

winhorse/iStock

“第2次MBOブーム”が到来?

 この創業家が検討しているといわれるMBOは、実はいま、“第2次MBOブーム”の到来かと言われるほど、増加傾向にある。MBOによって上場を廃止する「非公開化」事例は、2001年に初めて登場、11年にピークを迎え、その後落ち着いていたが、20年を過ぎるあたりから再び、活気づいてきた。

 この約1年を見ただけでも、一般の人にもよく知られているような上場企業がMBOを実施し、上場を廃止している。大正製薬ホールディングス(24年4月)、アオキスーパー(24年5月)、ベネッセホールディングス(24年5月)、スノーピーク(24年7月)、アウトソーシング(24年6月)、永谷園ホールディングス(24年9月)、APAMAN(24年10月)などだ。このうち、アオキスーパーを除き、投資ファンドを活用してMBOを実施している。

 以下には、06年以降に実施された、主な流通小売業のMBO事例を以下にまとめた。流通小売業においても、全業種での傾向同様、11年をピークとする第1次ブーム、20年あたりから始まる第2次ブームの到来がうかがえる。

ただし表からもわかるように、投資ファンドを活用するMBOは多くはない。

MBO完了時期 上場企業名 主たる事業内容 投資ファンドの活用 MBO後
2006年 6月 すかいらーく
(現すかいらーくホールディングス)
外食 14年にすかいらーくホールディングスとして再上場
2009年 9月 リオチェーンホールディングス 婦人服販売    
10月 オオゼキ 食品スーパー    
12月 チムニー 外食 投資ファンドと組んでのMBO、2012年に再上場
2010年 5月 ユニマットライフ コーヒー・紅茶・清涼飲料水・食品日用品雑貨の販売    
2011年 1月 サザビーリーグ 衣食住ブランドの企画、販売及び卸売等    
3月 エノテカ ワインの輸入販売  
8月 ゴトー 紳士服、レディス、キッズ衣料の販売    
9月 コージツ(現好日山荘) 登山用品・アウトドア用品の販売  
10月 バルス(現Francfranc) インテリア・雑貨の企画、開発、販売   13年セブン&アイが子会社化。投資ファンドを経て、24年8月、アインホールディングスが子会社化し、10月インテリア・雑貨の小売事業についてはアインファーマシーズが承継
2012年 1月 アップガレージ
(現アップガレージグループ)
中古カー&バイク用品の買取・販売   組織再編後、21年、グルーバーとして上場。23年、アップガレージグループに商号変
2013年 5月 メガネトップ メガネ、コンタクトレンズ、補聴器の販売    
9月 タイヨー 食品スーパーほか    
11月 クレックス ガス及びガス器具類の販売    
2018年 12月 一六堂 飲食店経営    
2020年 3月 総合メディカルホールディングス
(現総合メディカルグループ)
調剤薬局ほか 24年2月、別ファンドに売却
10月 キリン堂ホールディングス ドラッグストア 23年11月、一部株式を同業のサンドラッグに売却
2021年 6月 ファミリー 中古車販売、輸入車正規ディーラー    
10月 オンリー 紳士服・婦人服・雑貨の販売    
2022年 11月 プレナス ほっともっとFC、やよい軒FC    
2023年 7月 ピーシーデポコーポレーション 周辺機器、中古、パーツの販売、修理、    
2024年 2月 アオキスーパー 食品スーパー    

MBOとは何か

 そもそもMBOとは何か。マネジメント・バイアウト(Management Buyout)の略で、自社の経営陣が自社または自社の事業の一部を買収することをいう。経営陣の自己資金のみで買収するケースもあるが、とくに上場会社に対するMBOでは多額の買収資金が必要となるため、経営陣がPE(プライベート・エクイティ)ファンドと協力して資本(エクイティ)を調達し、そのエクイティを基に金融機関から借入金を調達して買収資金とするLBO(レバレッジド・バイアウト)による買収手法が多くみられる。

 すべての株式の買い取りを前提とするMBOが大半のため、上場企業が実施する場合には証券取引所への上場が廃止(非公開化)となる。借り入れなどによる買収資金はそのまま被買収企業が引き継ぐことになる。

 ではなぜ、上場企業という「看板」を返上してまで非公開化(上場廃止)に向かうのか。

 非公開化をめざす多くの企業に共通するのが、短期的な業績変動や株価動向、株主の要求などにとらわれず、中長期的な視点から経営課題に対処するためには、いったん非公開化するのが望ましいという判断だ。

 とくに昨今は、事業環境の変化が著しく、非公開化により経営改革への意思決定を迅速化したいという狙いもある。そのため、事業会社やコンサルティング会社などでの経験を持つ専門家が、資本や財務面だけでなく当該企業の事業を現場レベルで支援可能なPEファンドと組んでMBOを実施するケースが定着してきている。

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