農産物は工業製品ではない! 青果部門を「全体最適」から切り離せ
食品スーパー(SM)の青果売場が抱える問題を解決し、より魅力的な売場に改革するための提案をしようというこの連載。今回は第1回連載で指摘した「小売業全体論理(農産物の工業製品化)」とバイヤーの知識不足の問題について、青果部門における実情と解決の方向性を考えてみたい。
SMの「全体論理」から青果部門を切り離すべきだ
まずは「小売業全体論理」の問題だ。これは第1回で述べたように、SMの多くが収獲量や品質が不安定な農産物を、計画的に安定した品質で製造される「工業製品」と同じ仕組みに組み込んでしまっているという問題である。
SM企業としてはシステムも運営方法もマネジメント体制も、全部門で統一したほうがコスト的にはメリットがあるから、青果だけそのシステムから切り離すというのは非効率ということになる。
しかし青果部門だけは、扱う商品が「工業製品」とはまったく異なる特性を持っているので、本来は全体のシステムやマネジメントから切り離すべきなのである。
ところが、ほとんどのSMでは同じシステムに組み込まれているから、工業製品と同じスケジュールで動くことになる。
それによって、「産地」(生産者)や「卸」(市いち場ば、仲卸)への影響が大きく出る。「品質がよいときに安くなり、品質が悪いときに高くなる」という現象になる。これでは、生産者も消費者も納得できない。
SM企業の中で「青果の特殊性を鑑みた仕組みや手法」ができている企業の一社がオーケー(神奈川県/二宮涼太郎社長)だ。
「全体論理から切り離せているか」はさておき、同社は青果が抱える課題の大きな要因となっている「チラシ」に青果の価格は、載せていない。
チラシの弊害はかなり大きい。「工業製品」と同じ感覚で、チラシ掲載から2~3週間前に、チラシに載せる商品、売価、原価を決めないといけないからだ。
だが、2~3週間前に原価などを決めてもほぼ当たらない。天候次第で相場は大きく変わるからだ。
そして、現実と乖離(かいり)した無理な事前の値決めが、相場の乱高下を招いていることは第1回連載で説明したとおりだ。
価格を直前に決定するオーケーの仕組み
オーケーはチラシに青果の価格を掲載しないので、商品の売価決定・原価決定・発注を大体販売日の