お客の大半は外国人! 京都・烏丸、夜にだけ行列ができる飲食店の謎

2024/01/19 05:59
森本 守人 (サテライトスコープ代表)
Pocket

京都市中心部の「烏丸」エリアは、金融機関はじめ企業のオフィスが集積するビジネス街。その一角に、行列ができる飲食店がある。京都では決して珍しくないが、よく見ると大半が外国人で、しかも皆、共通の何かを感じる。この不思議な光景の謎を解くため、店で食事をしてみた。

このラーメンを求め、外国人が集まってくる

多い日は30人以上の行列が……

 ビジネス街として知られる、京都中心部の烏丸エリア。その一角に、木造建築も目立つ京都風情漂う小道がある。

 古くは呉服関連の業者の事務所もあったと記憶するが、繊維産業の衰退もあり飲食店が増加、狭い通りに多くの店が並ぶようになった。その様子は、鴨川近くの「先斗町」に似ているところから「裏先斗町」とも呼ばれる。

烏丸エリアの一角にある京都風情が漂う「裏先斗町」と言われる小道

 仕事場が近い私は、よく小道を歩く。毎日ではないが、数日に一度、時間帯は朝、昼、夜と一定ではない。

 その中、少し前から気になっていたのは、夕方6時前後、ある飲食店の前にできる長い行列だ。あまり並ばない日もあるが、多い日は30人以上が待っている。最初は「人気があるんだな」ぐらいに思っていたが、一度、意識のアンテナが立って以降は、毎回、通り過ぎる際、“チラ見”しながら新たな情報を収集していた。

ビジネス街として知られる烏丸エリアの一角にある飲食店は、夜になると外国人の長い行列ができる

 そうして得た情報とは、おおよそ次のようなものだ。①飲食店はラーメン店、②並んでいるのはほぼ外国人、③よく観察すると、皆、肌の色が似ており、身なりにも共通項がある、④長い行列が見られるのは夕方で、昼にはできない──。

 といっても差し迫った事態ではないため、すぐに究明するような行動は取らなかった。そんなある日、「もしや」と、行列についての仮説が頭に浮かぶ。すぐにスマホで検索すると、やはり思った通りだった!

 つまりその店はハラールに対応したラーメン店だったのだ。店名は「鶏そば Ayam-Ya(あやむや)烏丸店」。ハラールラーメンとは、イスラム教徒の「ムスリム」が食べてもよい仕様であることを意味する。つまり原材料に豚を使用せず、スープは鶏ベースである。もちろん具材や麺も。

 店を運営するのは海外でも事業展開している大阪の企業。さらに調べると当初、京都でラーメン店を出したが苦戦したという。一般に和食のイメージがある京都だが、実はラーメン激戦区。何か特徴を出さないと埋もれてしまう。

女性はヒシャブを着用している

 厳しい状態が続いていた時、「スープは鶏肉だけで作っているのですか」というインドネシア人の留学生からの問い合わせがあった。それをヒントにムスリム需要の存在を知り、ハラール対応する方針に変更、現在に至っているようだ。

1 2

記事執筆者

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態