「クックマート」のローカルスーパー第三の道 地域×HR戦略が地方チェーンを面白くする
愛知県・東三河~静岡県・浜松エリアで現在12店舗を展開する「クックマート」は、平均売場面積300坪と小型ながら、1店舗当たり平均年商が約27億円と大手を凌ぐほど支持を得ているローカルスーパーだ。2023年7月、その「クックマート」の競争力の背景にある戦略と、今後のローカルスーパーの新しい成長の道筋を示した書籍『クックマートの競争戦略 ローカルチェーンストア・第三の道』を発売。すでに第3刷となり業界内外から反響を呼んでいる。著者でクックマート(愛知県)代表である白井健太郎氏に、書籍に込めた想いや、書籍で記した「第三の道」について現在の進捗を伺った。
ローカルスーパーから
業界へのメッセージ
――書籍『クックマートの競争戦略 ローカルチェーンストア・第三の道』が好評です。
白井 ありがとうございます。これまで食品スーパー業界は大手企業中心の議論が主流で、「本当の」ローカルスーパーからの提言は少なかったように思います。そこに、「大手スーパーとローカルスーパーは『似て非なるもの』ではないか?」という視点を持ち込んだのが本書です。
今までの食品スーパー業界では、売場や商品の話が中心で、それ以前の独自の思想やコンセプトの話が非常に少ない。それにより極端な同質化が起きている。そこに違和感を持っていました。クックマートを運営するなかで、ローカルでも、中小でも、やみくもに大手企業を真似るのでなく、その企業ならではの強みを発揮できることが大事なのではと考えました。
――執筆時は試行錯誤を重ね、苦労もされていました。
白井 組織の思想や文化というのは目に見えるものではなく、「一言では言えない」複雑なものです。「何を書くか」という内容自体は以前からイメージが出来ていたのですが、それをどのように言語化すれば外部の方に伝わるかという点に苦労しました。
転機となったのは2022年末に競争戦略の専門家である、一橋ビジネススクール特任教授の楠木建先生との対談の機会をいただいたことでした。楠木先生とお話しするなかで、自社の戦略のどこが面白いのか、自己認識が深まりました。そのなかで、先生の主著である『ストーリーとしての競争戦略』を踏まえて、私なりの「アンサーソング」として書籍を構成したら面白いのではと思い至りました。
さらに、大変ありがたいことに、楠木先生から経営学の視点から約35ページに渡って解説文を寄稿いただいたので、競争戦略の骨格となる考えについてもしっかりと学べる一冊になったと思います。私自身、書籍執筆を通じて、改めて自社と、経営者としての自分への理解が深まったと感じており貴重な機会となりました。