マーケティングの大家が教える、マーケティングとはビジネスそのものである理由
「マーケティングとはビジネスそのものです」と断言するのは、早稲田大学商学学術院の恩蔵直人教授だ。教授によれば、大きな意味合いでは人事さえマーケティングと言えるのだという。どういうことか?恩蔵教授の発言から、我々が考える「狭いマーケティング」の呪縛を取り払ってみたい。
経営学が空中分解
柱として残ったのがマーケティング
「メーカーであれば、企業活動のうち、製造、財務、人事を外したすべてがマーケティングです。企画立案、設計、完成品ができるまでのプロセス。宣伝販促やパッケージ、流通ルートの選択などは、全部マーケティングの範疇になります。それらの担い手が従業員であることを考えれば、大きな意味合いでは、製造、財務、人事もマーケティングと言えます」。
「流通業にとってのマーケティングは、出店計画に始まり、店舗開発、出店、店舗運営、商品政策(品揃え、バイイング、売り方、開発など)、情報システム、物流、デジタルトランスフォーメーション…。企業活動の全てがマーケティングになります」。
「私が学んだころのマーケティングとは非常に狭い学問でした。経営学という大きな概念があって、その中のひとつにマーケティングが位置していました。ところが、今は、その経営学自体が空中分解してしまい、戦略論や組織論などが代わって出てくるようになりました。柱として残っているのがマーケティングです」。
「実は現在、米国の大学には商学部はありません。第二次世界大戦後は、(商業=コマース〈Commerce〉)という言葉を使わなくなっているのです。それに代わる言葉として出てきたのがビジネスです。日本のビジネススクールが米国で言う商学部のイメージです。《スクールオブビジネス:School of business》、《ビジネス・アドミニストレーション/マネジメント:Business Administration/Management》、《デパートメント・オブ・ビジネス・アドミニストレーション:Department of business administration》…。コマースという言葉を使わないようになってから、ビジネスの概念が大きくなっています。そして、そのビジネスとは、マーケティングのことを指すのです」。(談:文責・千田直哉)
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