はかりメーカー大手のイシダ、躍進を支える5つの行動規範

2022/06/16 05:55
    千田 直哉 (編集局 局長)
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    計量システム機器大手のイシダ(京都府)は、民間初のハカリメーカーとして1893年(明治26年)に創業された企業だ。主に食品の計量・包装機器を製造してきたが、検査、表示、情報、搬送、衛生などの分野に事業領域を拡大。現在、世界100 カ国以上で事業を展開している。「ノントレイ包装機(NTP Series)」や「ドットマトリックス電子棚札 H-ESL」「自動計量包装値付機 WM-AI LX」などのヒット製品を連発している。

    イシダがめざすべき姿とは

     石田隆英さん(52)が社長に就任したのは2010年5月。石田さんは、それを機に、「ISHIDA Mind」を策定した。

     当時、創業から118年を迎えていた同社には、いろいろな経営理念が混在していたとのことで、一度、まとめておく必要があると考えたことに端を発している。

     三つ折り名刺サイズの「ISHIDA Mind ハンドブック」の内容を見ていくと、まず<めざすべき姿>として、『世の適社・適者』とある。

     世界の人々に喜ばれ、世の中に必要とされる存在になれれば企業は不滅であるので、日々変化する状況にしっかり対応することを旨としている。その志向は、ダーウィンの適者生存の法則に通じる。

     イシダの<企業理念>は、『三方良し』。近江商人の言葉に由来し、自分、相手、回りがすべていい状態であるということを理想とするもの。社員と会社が一体となって成長・発展し、お客に満足をもたらし信頼され豊かな社会づくりに貢献できる企業をめざす。

    イシダを支える5つの行動規範

     そして<行動規範>は5つある。

     1つめは『異体同心』。異体同心なれば万事を成【じょう】ず、という考えのもと、従業員が心を合わせ一体となり共通の目標に向かいベストを尽くせるように互いを認め合い、コミュニケーションのとれた風通しの良い職場を築くというもの。

     2つめは『三現主義』。現場に行く、現物を見る、現実を知る、の3現。客観的な事実に基づいて物事の本質を見極め、お客や社会の期待に応えるというものだ。だから常に意識しているのは、お客の声であり、技術主導型ではなく、マーケットやニーズ主導で商品開発に当たっている。

     3つめは『Speed! Speed! Speed!』。Better is better than best.(巧遅は拙速に如かず)というもので、とにかく素早く動き、素早く対応しようということだ。

     4つめは『智徳一致』。高い専門性と豊かな人間性を持てというもので、それぞれの専門分野でプロフェッショナルになり、社会人として尊敬され信頼される高い品性を身につけようというもの。

     5つめは『志、そして日々前身』。意志あるところに道は拓けるとし、小さくとも確実に今日の一歩を重ね、情熱をもって前進を続けようというものだ。

     創業120年超の同社は、過去に一度も赤字を出していない堅牢な企業体を今日も維持する。2021年3月期の売上高は単体962億円、連結1313億円を計上しており、「食のインフラ」として軽量包装機器の業界で世界一の企業になるべく、さらなる勇躍に挑んでいる。

    記事執筆者

    千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

    東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
    ※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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