QRコードを上回る!?日本の小売業に暗号資産(仮想通貨)が必要なこれだけの理由
「決済手数料」はユーザー負担
決済手数料という観点で見ると、QRコード決済サービスの多くは3%前後の料率を公表している。手数料無料キャンペーンを展開している事業者もいるものの、キャンペーン終了後の手数料がどうなるかは不透明だ。
これに対して暗号資産決済では、送金手数料を負担するのは送信側、つまり消費者が基本となる。そのため、事業者が決済手数料を心配する必要はない。
「ビットコイン」のような通貨の決済手数料は、数十〜数百円程度と割高であり、消費者がビットコイン決済を利用するメリットは薄いように見える。ただ、暗号資産取引所「コインチェック」などでは、コインチェック内での送受信が無料となっている。事業主とユーザーがコインチェックに口座を持っている場合は決済手数料を気にせず決済ができるのである。
ビットコインより上!? より利便性の高い暗号資産とは?
とは言え、「暗号資産取扱所が同じであれば手数料無料」という制約は、ユーザーにも店舗にも混乱を招いてしまうかと思われる。しかし、「ビットコイン以外の暗号資産による決済」であれば、1円以下の手数料で送金することもできる。
たとえば、ビットコインから派生し現在日本でも取扱いが認められている「ビットコインキャッシュ」や、ネット商圏などを展開するSBIホールディングスが国内での実用化をめざざす「XRP」といった暗号資産は、送金手数料1円以下、送金時間数秒〜数分をすでに実現している。これら、いわゆる「次世代暗号通貨」を決済システムに導入した場合は、速度や利便性、手数料という面で大きなメリットを得ることができるだろう。
「暗号資産決済はキケン?」 海外で進化するセキュリティ
暗号資産の利用に対して否定的な人の中には「ハッキングで資産を失う」と心配する声が多い。
2018年1月、コインチェックがハッキング被害にあい、580億円分の暗号資産が流出する事件があった。この事件のインパクトは大きく、暗号資産のセキュリティに関する心配は現在も根強い。
そうしたなか、海外では暗号資産を適切に管理するため、金融機関と同等のセキュリティを誇る「カストディ(資産管理)」サービスを整備する動きが活発となっている。米金融大手のフィデリティは、2019年3月に暗号資産のカストディサービスを開始。米インターコンチネンタル取引所は今年5月に暗号資産専用のカストディサービスを提供するベンチャー企業を買収したと発表した。このようなカストディサービスがグローバルスタンダードとなることで、暗号資産活用が加速することが期待される。
暗号資産の「価格変動」への対処法は?
暗号資産決済を語る際に、最も注意すべき点は「暗号資産の価格変動(ボラティリティ)」だ。
ビットコインは、19年4月からの2ヶ月間で1BTC=30万円台後半から90万円台超と高騰するなど、その価格差が非常に大きい。事業収入としての暗号資産の価値が上がる分には問題はないかもしれないが、急落した場合には大きなダメージとなってしまう。この価格変動こそが、現状における暗号資産決済の大きな障壁だ。
現在は暗号資産での収入に関する税法上の規定がはっきりしておらず、価格変動による損益の繰越ができないこともあり、「暗号資産は決済後すぐに日本円に換える」のが最も安全とされている。
暗号通貨の決済では消費者に「日本円換算の価格」で支払ってもらい、価値が変わらないうちに日本円にしてしまうことで、価格変動リスクを抑えることができる。
しかしこのような運用をする場合、換金のたびにスプレッド(取引手数料)がかかってしまうので、せっかくの決済手数料の安さが無駄になってしまう。こうした運用における手数料が不要になれば、国内の暗号資産決済は現実味を帯びてくるだろう。
ヤフー、楽天も? 暗号通貨決済の今後は
現在は、楽天による「楽天ウォレット」、ヤフーの「TaoTao」など国内IT大手による仮想通貨取引所が今年中に営業開始すべく、準備を進めている。これらQRコード決済も手がける大手企業が暗号資産決済の領域にまで進出するとなれば、国内小売業にも大きなインパクトを与えるだろう。
2019年5月現在、ビットコインの取引量が歴史上最大を計測するなど、2017年の一大ブームを彷彿とさせる盛り上がりを見せる暗号資産市場。巨大に膨れ上がった投機マネーを価値に変えるための戦いが水面下で激しくなってきている。