自衛隊とウエルシアが興味を示したコミュニケーションツールって何だ?
業務指示の徹底に絞ったコミュニケーションツール
業務改善の手法として、このところ注目を集めているのが、流通小売業界向け業務指示支援ツール「WOMS(Work Order Management System)」(菱洋エレクトロ/東京都)だ。
「組織内のコミュニケーションツールには、古くは電話、FAXに始まり、グループウエアや電子メール、SNSなどがある。とくに近年では、1つのシステムでさまざまな用途に対応できるグループウエアの導入が進んできた。しかし、複数の事業所、店舗を抱えるところでは、業務指示が現場の末端まで行き届かない、現場で指示どおり動いているのか確認できないという不満や不安も生じてきている。リコール対象の連絡、キャンペーンの実施の指示等のように、企業の業績に直結する業務指示が徹底されていないのではないか、と疑問に持つ経営層も増えている」
WOMSの担当者はそう話し、その原因として、導入したコミュニケーションツールの使い方に問題があると指摘する。
たとえば、本部からの業務指示が、同じタイミングで複数本流れている、複数カ所から1名の受け手に送られている、連絡メールと業務指示が紛れてしまっているといったケースはほんの一例だ。また、だれかが連絡あるいは業務指示を流すと、それに触発されて、たて続けに、優先順位や重要度もさまざまな要件が流される、ということも少なくないという。その結果、「ヌケ」「モレ」が生じたり、事業所や店舗ごとに指示の進捗状況がバラバラになるといった事態に陥ってしまう。
「そこで当社は、オールマイティなツールではなく、業務指示を徹底させるツールとして『WOMS』を開発した。クラウドベースなので、開発コストや稼働までの準備期間も気にならない規模だと思う」(担当者)
WOMSの特徴として、期限ありの業務指示、期限なしの業務連絡の専用ツールであること、受信先が業務指示の内容を確認したかどうか(内容を開封したか)がわかるのはもちろん、指示内容を実施した際の確認ボタンもあり、「指示内容の確認⇒実施」というプロセスが簡単に管理できることがあげられる。
「WOMSは“徹底したい”という強いメッセージを伝えることができる。そのため、意外な引き合い先として自衛隊がある。自衛隊の場合、即座に生死に関わるようなクリティカルな要件も多く、WOMSの考え方が理解されたようだ」(同)
このWOMS導入にあたって必要になるのが、業務指示の命令系統だ。本部から各商品担当へ、商品担当から店長へ、スーパーバイザーからそれぞれの管轄店長へ、社長から全社員へ、といった実際の業務指示フローをWOMSのシステムに設定し(菱洋エレクトロで行う)、対象者にID、パスワードを付与すれば、利用可能になる。
このWOMSをいち早く導入し、業務指示の徹底を図ったのが、大手ドラッグストアであるウエルシア薬局だ。
「売れ行きの悪い商品の追加発注をしないよう、メールや電話で注意勧告をしていたが、しっかり業務指示が伝わらず、全店在庫が増加し、損失を被った」というケースがたびたびあり、それを解決するためのソリューションとしてWOMSを導入することになったという。導入IDは2000IDを超える規模になっているが、同社では「日々発生する本部から各エリア、各店舗への業務指示を行うための基盤として重要な役割を担っている」と語っている