全社員の9割と“伴走する”AIメンター アトレのDX型人材戦略が変える組織の常識

植芝 千景 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

“AI文化”を企業競争力に 3ステップで組織変革を構想

 アトレは、AIメンター施策を段階的に深化させていく方針を掲げており、今後は3つのステップを通じて組織変革を進めていく構想だ。まず2025年度を「Step 1」と位置づけ、「AI活用に前向きな意識を持つ社員の割合60%」というKPI(重要業績評価指標)を設定し、社員一人ひとりの意識変革に注力する。

 続く26~27年度のStep2では、AIに強みを持つ人材の育成や社内ツールの内製化を推進するとともに、現場主導でAIを活用するモデルケースの確立をめざす。そして30年度前後を見据えたStep 3では、AIの活用が企業文化として定着し、社員のスキル進化を持続的に支える基盤として根づかせることを最終的なゴールとしている。

 AIメンター施策は、単なるツール導入ではない。社員の意識を変え、現場の挑戦を支え、最終的には“組織そのものの変化”へとつなげる中核戦略だ。アトレがめざすのは、AIを活用して「人が変わる」「組織が学び続ける」会社である。

 小売・商業デベロッパー業界において、生成AIを“業務支援”ではなく“人材育成”や“企業文化の核”として位置づける取り組みはまだ少ない。アトレの試みは、デジタル時代の企業にとって、持続的な変化の起点となるかもしれない。

 「正解のない領域だからこそ、失敗を恐れずに試し続ける。その繰り返しが、イノベーションにつながる」と山本氏は力を込めた。

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記事執筆者

植芝 千景 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

同志社大学大学院文学研究科(国文学専攻)修士課程修了後、関西のグルメ雑誌編集部を経て、ダイヤモンド・リテイルメディアに入社。関西小売市場やDX領域を中心に取材・執筆を担当している。現在は大阪府在住。

まとまった休日には舞台・映画鑑賞を楽しむほか、那智勝浦へ弾丸旅行に出かけることも。世界各国の家庭料理を再現するのも趣味のひとつだが、料理に入れたスパイスで歯が欠けたので今は控えめに取り組んでいる。

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