トライアルホールディングス(福岡県/亀田晃一社長)傘下でAIを活用した小売支援などを行うRetail AI(東京都/永田洋幸社長)は6月10日、新たな「スマートショッピングカート」を開発したことを発表した。既存機能を踏襲しつつ、顧客体験を向上させレコメンド機能を強化しているのが特徴だ。
来店頻度向上やレジ人時削減に貢献
「スマートショッピングカート」とは、セルフレジの機能を搭載したタブレットとスキャナーが備え付けられた買物カートのことだ。買物前に会員カード、もしくはアプリのバーコードをかざしてログインし、お客は自ら商品をスキャンして買物かごに入れ、最後は専用レーンを通過することで精算が完了する仕組みとなっている。
事業会社のトライアルカンパニー(福岡県/石橋亮太社長)では、2018年2月に開業した「スーパーセンタートライアルアイランドシティ店」(福岡県福岡市)を皮切りに、既存店や新店に「スマートショッピングカート」のほか、AIカメラやデジタルサイネージなどを導入し、「スマートストア」への転換を進めている。「スマートショッピングカート」の導入により、来店頻度が13.8%向上しているほか、レジ人時が20%削減されるなどの効果が出ているという。シニア層の利用も多く、50歳以上の利用が全体の半数を超えている。
また、システムの外販も進めており、20年7月にはリテールパートナーズ(山口県/田中康夫社長)傘下で食品スーパーを展開する丸久(同)が「スマートショッピングカート」の導入を開始した。
スキャン漏れを防止する機能を搭載
今回発表された「スマートショッピングカート」の新モデルは、既存の買物カートにタブレットを取り付けた現行モデルと異なり、最初から「スマートショッピングカート」として開発されているのが特徴だ。新モデルは2種類あり、通常の食品スーパーでの使用を想定した小型モデルと、週末のまとめ買いなどに適したより容量の大きい中型モデルを用意した。
現行モデルより2~3割軽く、商品をスキャンしてすぐに商品を入れやすい設計となっているほか、小型モデルはマイバッグを取り付けられるようになっており、会計後の詰め替えは不要だ。また、「チュートリアルやガイドを充実させ、初めてのお客さまにも使いやすくした」(Retail AI COO 田中晃弘氏)という。画面UIも表示を大きくするなどさらに見やすさを向上させており、野菜や果物などバーコードのない商品の登録にも対応しているほか、商品のスキャン漏れを防止するため、スキャンされていない商品を自動検知するアラーム装置も搭載した。
完全AI化したレコメンド機能
さらに今回の新モデルで注目したいのが、完全AI化したレコメンド機能だ。約270億件のID-POSデータを情報化した社内開発のレコメンデーションアルゴリズムを使用し、利用者の属性や購買履歴をもとにパーソナライズされたレコメンドが可能となった。これまでもレコメンド機能はあったものの、主に事前に設定した商品を表示するもので、アイテムも数百ほどだったが、今回は数千規模の商品の中からおすすめ商品を表示できるようになったという。商品をスキャンした際、画面の右側には購入商品のリストが、左側にはおすすめ商品が購入確率が高い順に表示される仕組みとなっている。現行のモデルを導入しているトライアルの店舗では、レコメンドのシステムを順次最新のものに置き換えていく考えだ。
また、新モデルでは初期費用を抑えるため、月額のサブスクリプションプランを新設した(価格は未定)。導入のハードルを下げ、将来的には国内だけでなく海外も含め、グループ内外の企業への展開を積極的に進めたい考えだ。現在はトライアルと丸久の計38店舗に3640台の「スマートショッピングカート」が導入されているが、21年内にはグループ内外で合計63店舗、6500台の導入をめざす。