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AI活用のリアルタイム・レコメンドが、店舗とECの売上を拡大させる!

2019年9月11日から13日までの3日間、東京ビッグサイトにて、食に関わる6つの展示会(フードシステムソリューション、フードセーフティジャパン、フードファクトリー、フードディストリビューション、フードeコマース、SOUZAI JAPAN)が同時開催され、「食品のEC」をテーマにした「フードeコマース」(主催:食品イーコマース普及協会)は、国内初の食品特化のECの展示会だったこともあり、3日間の合計入場者数は4万6138名にのぼった。本稿ではAI技術によるレコメンドサービスに焦点をあてた。

Photo by metamorworks

リアルタイム・レコメンドに注目集まる

 「適切なものを、適切なタイミングでおすすめする技術=レコメンドが、市場を変えてきた。その代表が、アマゾンであり、ネットフリックスだ」

 レコメンドエンジンの売上で、国内シェア№1の実績をもつシルバーエッグ・テクノロジー(大阪府/トーマス・フォーリー社長)による、ECソリューションセミナーでの第一声がこれだった。同社のレコメンドサービス「アイジェント・レコメンダー」は、AIと高等数学を組み合わせたロジックにより、リアルタイムにレコメンドを提供するもので、コープこうべ、カクヤス、業務用食材卸のRYQUE(リクエ)をはじめとして、国内500サイト以上での利用実績がある。

 ECの世界でレコメンドサービスはいまや当たり前だが、実はその精度はさまざま。一定の商品の購入者あるいは閲覧者に対して、ほぼ決め打ちでおすすめをするもの(パーソナライゼーションとは名ばかりで、同じ商品を見た人にはほぼ同じ商品のレコメンドがなされるような)もあれば、購買行動に限らず、その人の趣味趣向を考慮し、そのときのその人に合ったものをレコメンドするものもある。後者のレコメンドサービスの場合、これまでは1日1回、サイト利用者の購買行動をバッチ処理して、レコメンド内容を更新するものが中心だったが、最近は、アイジェント・レコメンダーのように、購買行動が発生する都度、分析をしてリアルタイムでレコメンドするものへの注目が集まっている。

「商品の入れ替えの激しいカテゴリーでも、最新のデータからレコメンドができ、完売あるいは欠品している商品を表示してしまうこともない」(担当者)

併せ買いの促進効果が得られる

シルバーエッグ・テクノロジーが提供するリアルタイム・レコメンドサービスのアイジェント・レコメンダー

 このアイジェント・レコメンダーにおいても、「同じ志向のある人は同じものを買いたくなるだろう」という、他のレコメンドサービス同様の仮説が基本に流れているが、ユーザーがどのようなものを、どのような順番で見てきたのか、買ってきたのか、過去の閲覧・行動の経路を分析することにより、ユーザーの嗜好をより高い精度で理解できるように設計されている。

 そして、
 「この商品を見た人は、こんな商品を見ています」
 「この商品を購入した人は、いっしょにこんな商品を購入しています」
 「この商品を見た人は、結果的にこんな商品を購入しています」
 「過去にこの商品を購入した人は、いま、こんな商品を購入します」 
 「このカテゴリー閲覧/キーワード検索をした人は、こんな商品を見ています」

 といった具合に、一人ひとりの嗜好に沿ったおすすめの商品を瞬時に表示する。意外性のある、ただし好みに合いそうな商品との出会いを創出することもある。

 また、メールマガジンにアイジェント・レコメンダーのスクリプトを埋め込むことも可能だ。そうすると、メール開封と同時に、そのときのおすすめを表示させることもでき、画像のクリック率も高くなる。

 ある飲料販売ECサイトでは、アイジェント・レコメンダーを導入した結果、購買点数が160%になるなど、併せ買いの促進効果が得られている。

 レコメンド導入で売上30%増の実績も

 利用実績では、BtoC向けのECサイトが圧倒的に多いが、より目的買いの傾向が強いBtoBのECサイトでも、新たな視点での効果をあげている。

 「いつも決まったものの購入に利用しているケースでも、別軸で新たな商品をレコメンドし、『こういう商品もありかも』と、お客様に気づきを与えることもある」(同)

 優秀な営業担当者が、これからの注目商品や売れ筋商品を的確にアドバイスしてくれるのと似たようなイメージだ。

 このサービスは、ECサイトやモバイルアプリ上だけでなく、実店舗での販売促進に利用することもできる。

 顧客カードから取得した購買履歴を、アイジェント・レコメンダーを使って分析すれば、同じような趣味嗜好をもつ人がどういう購買行動をとるのかを理解するのにも役立つ。もちろん、ECサイト上での購買行動を精緻に取得して分析するのに比べれば、その精度は落ちるが、購買履歴という“宝の山”を十分に使いこなせていない店舗にとっては大きな前進だ。休眠顧客の活性化や、アクティブユーザーにアップセルを促すきっかけにもなるだろう。

 また、これからECサイトを強化したいというユーザーにとっては、これまでの顧客データを生かしながら、徐々に、One to Oneのアプローチの精度を高めていくという、走りながらのEC強化も可能だ。

 導入コストはケース・バイ・ケースだが、月額15万円前後になることが多いという。

「導入により、EC売上が130%になるというデータもある」(同)を見込んで、採用に踏み切るところが増えているようだ。

 レコメンドが日々、売上に大きな影響を与えるようになる。AI技術の進歩によって、レコメンドサービスは日々、確実に進化を示している。