[東京 5日 ロイター] – コンビニエンスストア最大手・セブン─イレブン・ジャパン(東京都千代田区)が揺れている。人手不足を理由に24時間営業の見直しを求めたフランチャイズ加盟店の反乱が社長交代にまで発展した。この交代はAI(人工知能)を駆使した省力化システムの導入競争へと向かうきっかけとなるのか。
永松文彦次期社長は、「登板」直後から真価を問われそうだ。
<既存店支援強化>
「19年度は出店を850店。前年より500店以上抑制する」──。セブン─イレブンの親会社セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長は4日の会見でこう述べ、今年度は出店を抑制し、既存店投資を強化する方針を示した。
セブン─イレブンの過去3年間の出店は、16年度が1682店、17年度が1554店、18年度が1389店。これを見ると、今年度計画の850店がいかに異例な数字であるかがわかる。同社はこれまで年間総投資額の6割を出店に充ててきたが、今後は既存店投資に重点を置き、今年度は6割強を既存店投資に振り向ける方針だ。
同社が既存店支援を強化する背景には、加盟店オーナーの不満をかわす狙いもある。人手不足や人件費の上昇でオーナーは悲鳴を上げており、それが時短要求になって表れた。
加盟店は、売上高から商品の仕入原価を差し引いた粗利益の一定割合(チャージ)を本部に支払う契約となっている。加盟店は残った利益から人件費をねん出しなければならないため、人件費の上昇は店舗の収益悪化に直結する。
これに対して、本部は人件費上昇のダメージを受けないことから、オーナーの中には「共存共栄とは名ばかり」と不満がくすぶっている。
井阪社長は「チャージの減額は考えていない」としながらも、既存店支援を強化することで「加盟店も成長の糧を感じてもらえる出店政策をしていく」と語った。今年は「意志のある踊り場にしたい」という。
<一律廃止には慎重>
井阪社長は、見直しを求める声が挙がっている24時間営業について「立地、個店の状況に応じて柔軟かつきめ細やかに対応をしていく」と語った。
これまでの24時間営業を前提とした契約から、一歩踏み出した格好だ。ただ「24時間営業はセブン─イレブンのビジネスモデルの根幹をなしてきた」とも指摘。「何の検証もせずに拙速にこれを変えることは、加盟店の生活基盤を脅かす懸念に加え、顧客や取引先との信頼関係やブランドを毀損するリスクもある」と述べ、一律に取り止めることには慎重姿勢を示した。
この背景には、24時間営業を前提にサプライチェーンが組まれているという事情もある。
会見に同席したセブン─イレブン・ジャパンの永松文彦次期社長は「深夜の売上がない店は、状況に応じて対応する」と柔軟姿勢を示す一方で「深夜に顧客が来るような店は、24時間やらないという選択肢はやはりない」と強調した。
現在、全加盟店の0.5%に当たる96店のオーナーから時短営業の申し出があり、今後は時短営業の実験結果などを踏まえながら、オーナーと話し合いをしていく。
<カギ握るAI店舗化>
世耕弘成経済産業相はきょう、セブン─イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップなどコンビニ大手トップとの意見交換会を開催し、各社に加盟店との共存共栄に向けた「行動計画」を策定するよう要請する予定だ。
国が乗り出す事態にまで発展した今、コンビニ各社はもはやゼロ回答が許されない状況にある。
コンビニ各社は目先の人手不足に対応しながら、長い目で見た構造改革にも取り組まなければならない。そのカギを握るのが店舗のAI(人工知能)化だ。
ファミリーマートとパナソニックは2日、すべてのモノがインターネットにつながるIoT(インターネット・オブ・シングス)を活用した次世代型店舗を報道陣に公開した。画像分析や顔認証決済などの技術を活用することで、店舗の省力化やローコスト運営を目指す。
一方、昨年、小売業として初めて家電・IT(情報技術)の展示会「CEATEC(シーテック)ジャパン」に「未来型コンビニ」を出展したローソンは、専用アプリやセルフレジなどを活用して深夜時間帯を無人営業にする実験を今年7月から始める。
こうした動きに比べると、セブン─イレブンの取り組みは見劣りする感が否めない。店舗のAI化は人手不足を乗り切る切り札となる。同社も「今年度中にはセルフレジを全店に導入する計画を進めている」(永松次期社長)としているが、メーカーとの連携も含めて、開発をさらに加速させる必要がある。
(志田義寧 編集:田巻一彦)