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LINEとメルカリの決済連合に
乗り入れメリットがある事業者、ない事業者

2019年3月末、キャッシュレスサービス業界に衝撃が走った。LINE Pay(東京都)とメルペイ(東京都)が戦略的業務提携を締結したのだ。モバイル決済サービスを展開する両社は利用者、加盟店獲得で争う競合同士。“呉越同舟”の提携は、乱立状態にあるモバイル決済市場にどんな影響をもたらすのか――(本原稿は6営業日連続掲載の連載・キャッシュレス化を乗りこなせ、第3回です)

LINE Payの長福久弘COOとメルペイの青柳直樹社長

LINE Payとメルペイ双方の加盟店を「相互開放」

 「比較的、大きな決断をした」――。

 2019年3月27日、都内のイベントホールで開催された記者会見の席上で、LINE Payの長福久弘COOはこのように語った。

 LINE Payは同日、フリマアプリ最大手メルカリ(東京都)傘下のメルペイと戦略的業務提携を締結したと発表した。

 提携に至った背景について、長福COOは「現在は決済サービス事業者が乱立状態にあり、『わかりづらい』と感じる利用者が増え、加盟店さまのオペレーションは複雑となり、負担となっている。このままでは『キャッシュレス』という言葉が一人歩きしていき、単なるブームに終わってしまう。この状況に一石を投じたい」と話す。

 両社はどのような分野で協業していくのか。提携内容は2つ。1つ目は「加盟店の相互開放」だ。2019年夏を目処に、「LINE Pay」「メルペイ」での決済に対応する加盟店を相互開放し、各サービスのユーザーが双方の加盟店で決済できるようにするという。加盟店からしてみれば、「LINE Pay」か「メルペイ」、どちらかの決済サービスに対応していれば、両サービスを利用することができるようになるのだ。

 なお、LINE Payはジェーシービーの「QUICPay」、メルペイは三井住友カードの提携により「iD」とそれぞれ非接触決済サービスと連携しているが、今回の相互開放ではこの部分は対象ではなく、QRコードを含むバーコード決済のみとなる。手数料については、各サービスの料率を維持するとしている。

“決済サービスのオープン化”は進むか!?

 提携内容の2つ目は、決済サービス事業者同士の加盟店アライアンス「MOBILE PAYMENT ALLIANCE(モバイル・ペイメント・アライアンス:仮称)」の推進。前出のLINE Pay、メルペイによる加盟店相互開放を、「○○Pay」「△△Pay」といった決済サービスを運営する、ほかの事業者にも拡げていくのがねらいだ。

 この取り組みについて、会見に出席したメルペイの青柳直樹社長は、「(LINE Payとメルペイの)2社の提携は“1+1”の足し算だが、ここにほかの事業者さまが加わっていくことで掛け算的に大きなアライアンスになっていく。今回の発表を契機に、ほかの決済サービス事業者さまへ当アライアンスへの参画を促していき、日本のキャッシュレス化を大きく前進させたい」と説明する。

 このアライアンスが拡大していけば、後発のペイメントサービスであってもアライアンスに参加すれば、ほかの事業者が持つ既存の加盟店網を活用することができるためメリットは大きい。利用者側から見れば、単純に利用できる店舗数が増えるという利点がある。

「オープンネス」を標榜するメルペイは、4月開始の「au PAY」とも加盟店開拓で連携する方針を打ち出している

大手決済事業者は、どう動くか?

 ただ、PayPay(東京都)のような、“人海戦術”による加盟店開拓を押し進める事業者が、このアライアンスに参加するメリットはあまり無いと思われる。自社で莫大な人的リソースを投入して開拓した加盟店を、ほかの決済サービス事業者に“タダ乗り”されてしまうに等しいためだ。

 メルペイの青柳社長は「(モバイル・ペイメント・アライアンスは)後から加わっていただく事業者により大きなメリットがある。加盟店開拓に自信をお持ちの企業にもメリットを感じていただけるのではないか」と話すが、PayPayを筆頭に、「楽天ペイ」を展開する楽天(東京都)や「d払い」のNTTドコモ(東京都)といった、強固な事業基盤を持つプレイヤーが参加するかは現時点では見通せない。

 19年10月の消費増税まで半年を切り、政府によるキャッシュレス決済に対するポイント還元施策の方針も概ね固まりつつある。キャッシュレス化は待ったなしの状況だ。

 各決済サービス事業者は、これまでと同様に自社の加盟店網拡大を進めるのか。それとも、業界全体でのキャッシュレス推進に舵を切るのか。2社のアライアンスを受けての、大手の動向が注視されるところだ。