データで徹底比較 注目度の高い東京、埼玉県境6エリア
店舗データ提供:(株)デジタルアドバンテージ/ロケスマ
食品スーパーやドラッグストアなど、主として日常生活を過ごすのに欠かせない店舗のマッピングデータから生活圏の変化が見えてくる。
ここ最近、オーケー、ヤオコー、ベルク、西友など注目店舗の出店が目立つ、東京都の北部と埼玉県エリア。近隣で多くの注目店舗が見られることから、店舗視察の候補にあがることも多い。いま、どのような変化が生じているかを見ていこう。
※文中の略称は以下の通り。総合スーパー(GMS)、食品スーパー(SM)、生協(CO)、ドラッグストア(DgS)、ディスカウントストア(DS)、ショッピングセンター(SC)、小型スーパー(小型SM)
※店舗、業態区分はデジタルアドバンテージ/ロケスマの各年3月末のデータ、人口は2023年1月1日現在の住民基本台帳
埼玉県和光市では、この5年(2019年⇒2023年)の間に、日常生活回りの店舗の競争環境が大きく変わった。1店舗あたりの人口(エリア内店舗数で、住民基本台帳の人口を割ったもの)が3割近く減少しているのだ(図1)。DgSは2割超、SMについては3分の2以下に減少している。店舗からすると、それだけ競争が激化したということであり、反対に生活者から見れば、身近で利用できる店舗が、DgSは1.3倍、SMは1.5倍増えたことになる。
しかも和光市の面積は、全国に1700以上ある市区町村のなかで下位3%にあるほど、狭い。生活者の実感としては数字以上の増え方になっているのではないか。
こうした和光市の変化は周辺地域と比べてどうなのか。隣接するエリアでも同じような変化が生じているのか。埼玉県の4市(和光市、戸田市、新座市、朝霞市)、東京都板橋区、同練馬区における2019年と2023年データをもとに考えていきたい(図2)。
まず、これらエリアの概要を見てみよう。
日本の総人口が1.6%減少しているのに対し、このエリアの人口は0.7%増。なかでも朝霞市は2.6%増、戸田市、和光市も1.2%増で、このエリアではまだ、本格的な人口減には入っていない。一方世帯数は、日本全体を上回る増加率になっている。つまり胃袋の縮小もなく、日用品へのニーズも減少フェーズには入っていないと考えられる。
実際、このエリア全体の店舗数は、2019年の558店舗に対し、2023年には627店舗に増えた。SMは223店舗から243店舗へ、DgSは209店舗から226店舗、小型SMは52店舗から80店舗に増えた。増加率はそれぞれ、7%、9%、8%、54%だ。
埼玉エリアと23区エリアで分けてみると次のようになる(図3、図4)。
埼玉エリアの場合、全体が144店舗から168店舗(増加率17%)、SMが59店舗から69店舗(同17%)、DgSが65店舗から72店舗(同11%)。小型SMは埼玉県内での出店スタートが2020年であり、0から2店舗に増えた。
一方、23区エリアは、全体が414店舗から459店舗(同11%)、SMが164店舗から174店舗(同6%)、DgSが144店舗から154店舗(同7%)、小型SMは52店舗から78店舗(同50%)で、比較数値のない小型SMを除き、埼玉エリアのほうが増加率が高い。
次に、店舗間の競争状況を示す1店舗あたりの人口を見てみる。
全エリアでは、2019年が3274.3人に対し2023年は2935.1人、2023年/2019年比は0.9だ。
エリア別では、2019年は和光市が最も多く4869.7人、以下朝霞市(3589.5人)、新座市(3517.8人)、練馬区(3406.7人)、戸田市(3405.3人)、板橋区(2848.7人)。2023年は和光市(3489.4人)、朝霞市(3263.3人)の上位、板橋区(2521.0人)の6位は変わらずだが、3位から5位は練馬区(3155.4人)、新座市(3076.1人)、戸田市(3072.3人)の順に変わった(図5)。
エリアごとの変化率では、和光市を除く5エリアはほぼ全エリア平均(0.9)に近い。和光市だけが0.72という極端な数値になっている。2019年和光市の1店舗あたり人口は他のエリアに比べ圧倒的に高かった(=それだけ店舗間の競争が激しくない)。それが2023年には、他エリアの値に近づいている。2019年以降、それだけの勢いで和光市での出店が一気に進んだのだろう。
業態構成比は、2019年、2023年ともに、エリア全体ではSMがもっとも高く、次いでDgSという順位になっている。
それに対し、埼玉県の4市と、練馬・板橋区で分けてみると、埼玉4市の場合、DgSが第1位、SMが第2位になる。練馬・板橋区は、SM、DgSの順で、小型SMをSMに含めれば構成比は5割を超える(図6)。
1店舗当あたりの人口の変化率では、和光市だけがとくに目立った。しかし、そのことだけで、他のエリアは同じような環境にある、という意味ではない。それぞれ特徴的な面がある。エリアごとに簡単に特徴を整理しておこう。
まず和光市からだ。店舗の増加率は突出、6エリアでもっとも低い練馬区の3倍以上、新座市の約2倍もある(図7)。2019年から2023年の間に、ヤオコー、ベルクが2店舗、西友、成城石井の計6店舗が出店(退店も2店舗あり)し、SMが11店舗になった。この4店舗増により、SM1店舗あたりの人口は3分の2に激減、結果、6エリア平均に近づいた。他方、DgSはトモズ、マツモトキヨシが出店、2019年比で1店舗あたり人口は2割減になった。それでもまだ、エリア平均からは1割以上、多いままだ。
次に戸田市だが、DgSには変化がなく、SMではベルク、スーパーバリュー、ピカールが出店し、サミットが退店している。戸田市のSM1店舗あたり人口はまだ平均値よりも1割程度高い。2020年からは埼玉県内での小型SMまいばすけっとの出店が始まり、戸田市内にも2店舗出店されている。この2店舗をSMとしてカウントすると、SM1店舗あたり人口はほぼエリア平均に近づく(図8)。
続いて新座市(図9)。SMではオーケー、ヨークマート、半額専門店をうたうTOA martが出店、DgSはサンドラッグ、ココカラファイン、ウエルシアの大手三社が出店している。DgSは「野火止」の住所に7店舗が集中するなど、他のエリアに比べて競争環境が厳しくなっている。
朝霞市はいまだ人口が増加している地域だが、1店舗当たり人口は、SM、DgSともにエリア平均をすでに下回っている。DgSの新規出店は2店舗、マツモトキヨシが北朝霞駅、朝霞台駅近くへ出店した(図10)。
小型SM(まいばすけっと)の出店(18店舗)が増加率を高くしている(和光市に次ぐ)のが板橋区だ(図11)。その影響を除くと、練馬区よりも低くなる。SM、DgSともに新陳代謝が激しい。SMは10店舗超の出店があるが、オーケー、マルエツを除けば、地元密着の店舗が目立つ。DgSは8店舗の出店、5店舗の退店。スギ薬局、セイムス、くすりのダイイチ、ぱぱすがそれぞれ2店舗を出店している。
最後は、このエリアのなかでもっとも増加率が低い練馬区だ(図12)。板橋区同様、新陳代謝が激しく、SMは14店舗の出店、退店が9店舗。DgSでは出店12店舗、退店5店舗で、スギ薬局が4店舗、ウエルシアが3店舗を出店している。業態としての勢いの違いを感じさせるのが、GMS2店舗減(いずれもイトーヨーカドー食品館)、DS3店舗増(Big-A、業務スーパー2店舗)だ。
ここまで、この5年(2019年⇒2023年)の出店状況から、日常の買物環境の変化を考えてきた。では、今後はどうなるのか。
1店舗当あたりの人口がエリア平均に近づいていくと考えれば、SMに関しては、ほぼエリア内で横並びになってきている(戸田市は、SMに小型SMを加えて換算)。
DgSについては、和光市は平均から1割以上も高い。今後、和光市内でDgSの出店が進み、平均に近づいていくのだろうか。市内の野火止地区にDgSが集中する新座市は平均より15%も低い6921.2人。この数値が平均に近づく(=DgSの退店が進む)ことはあるのか。日本全体での平均値は6787人で、大手DgSチェーンは商圏人口7000人でも持続可能なモデルの構築を急いでいる。
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