八ヶ岳山麓の小さなスーパーに全国からお客が殺到する理由
強烈な印象を与えるPOPの文言
売場の各所にあるPOPも強烈だ。たとえば果物売場の「はっさく」には、「甘い柑橘が人気…なんてどこ吹く風 この堂々たる酸味と苦味はどこにも負けない!!」との文字が踊り、ひな祭りの催事売場では「娘の成長を願う親の気持ちより尊いものはない。」と思いを込める。
こうしたユニークなPOPのほとんどは那波社長が考案したものだ。「ウソを書かないこと」「ネガティブな表現は絶対に使わないこと」という2つのルールを設け、商品の価値を端的かつ情熱的に、それでいて思わずクスリと笑ってしまうような表現を盛り込むことで、お客の注目を集めているのだ。
そもそも、このPOPがひまわり市場の名を全国に轟かせるきっかけとなった。数年前にツイッター上でとあるユーザーが「おもしろいPOPをつくっている店がある」と写真付きで投稿したことで”バズり”、程なくしてメディアが取材に殺到。それをきっかけにお客が押し寄せ、さらには同業他社や食品メーカーによる視察も相次ぐようになった。
那波社長は、「『POPがおもしろいから売上が上がる』と紹介されたこともあったが、そんなことはない。大事なのはおもしろさを追求することではなく、そのPOPの文言に恥じない商品を仕入れること」と話す。商品の品質や価値に絶対の自信があるからこそ、遊び心あふれるPOPをつくれるというわけだ。
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那波社長は「ひまわり市場で買物をしたということ自体が、その人の人生において記憶に残るような商売をしていきたい」と力を込める。業態を超えたボーダレスな競争が日本各地で激化するなか、淘汰を余儀なくされるローカルスーパーは少なくない。そんななか、ひまわり市場のような「わざわざ行く理由」を生み出す店づくりの手法は、あらゆる小売チェーンに大きなヒントを与えてくれるはずだ。