八ヶ岳山麓の小さなスーパーに全国からお客が殺到する理由

雪元史章(「ダイヤモンド・チェーンストア」副編集長)
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名物と化した社長のマイクパフォーマンス

ひまわり市場
那波社長の熱いマイクパフォーマンスもひまわり市場の名物

 ひまわり市場でユニークなのは品揃えだけではない。

 「中トロだけじゃないんだ! 心も一緒に巻くんだ! 当店の寿司コーナー、機械が握るシャリ玉は使わず、すべて手づくりでございます! 」

 「若かりし頃は“三鷹の尾崎豊”といわれ、社会そして上司、世間なんにでも噛み付いた男が今や心を入れ替え、ひまわり市場の誇る職人としてこの八ヶ岳で腕を振るっております」

 「誰よりも闘志で寿司を握る、そんな握り姿にしびれる野郎が続出。付いた名前はひまわり市場の矢沢永吉。そんな男の握り寿司が登場中です」

 店内のスピーカーを通して響き渡るのは、那波社長自らが売場を歩き回りながら繰り出す渾身の”マイクパフォーマンス”だ。社長の口から淀みなく出てくる言葉の数々は、昨年末に待望の新作が公開されて話題となった映画「男はつらいよ」の寅さんの口上を彷彿とさせる。那波社長いわく台本はなく、思いついたことを喋り続けているだけだという。

 那波社長がこのマイクパフォーマンスをはじめたのは、店内放送ならどこの売場にいても聞くことができ、より多くのお客に商品の価値を伝えられると考えたからだ。商品そのものだけでなく従業員の紹介までするのは、お客にキャラクターを伝えて親近感を持ってもらうため。「従業員の人となりまで伝えることで、安心して商品を買っていただきたい」と那波社長は言う。このマイクパフォーマンスを楽しみに来店するお客も多く、那波社長が休みのために実施されなかった際には、「せっかく県外から来たのに…」と肩を落とすお客もいるという。

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