オーケー、ロピアなど業界で注目される有力チェーンが地盤とし、最近はヤオコー(埼玉県)やベルク(埼玉県)などの県外勢も出店、食品強化型のドラッグストアも着実に勢力を拡大するなど、小売チェーンが激しい競争を繰り広げる神奈川県。その中心地である横浜で確かな存在感を放つローカルチェーンがある。ビック・ライズ(神奈川県/中嶋哲夫社長)が展開する「食品館あおば」だ。本稿では、同社の最新店「食品館あおば常盤台店」(神奈川県横浜市:以下、常盤台店)の売場からその強さを探ってみたい。
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横浜市内の空白地帯に出店!
ビック・ライズが2022年7月28日にオープンした常盤台店は、横浜市営地下鉄「三ツ沢上町」駅から直線距離で約1.2kmの場所にある。
同店が立地する横浜市保土ヶ谷区は、同市の中央部に位置し、東海道の宿場町として発展してきた。起状に富んだ地形で坂が多く、常盤台店は横浜国立大学の隣接地の高台にある。周辺に食品スーパーは少なく、店舗南側にある和田町、天王町などには小売店があるものの、同方面にアクセスするには勾配の急な上り坂を通らねばならず、足元の商圏は実質的に常盤台店の独占状態となったとみていいだろう。
店舗はビック・ライズ運営の商業施設「ライズモール」の1階に入る。建物は2層構造で、屋上が駐車場となっており、常盤台店のほかドラッグストアの「クリエイトSD」やクリニック、中古品買取専門店などが入る。
「食品館あおば」を運営するビック・ライズとはどのような企業なのか改めて確認していこう。同社の創業は1971年、青果専門店の「中嶋青果」をオープンしたのが始まりだ。その後、少しずつ店舗を拡大し、1986年にビック・ライズを設立。以降は年間1~3店舗を着実に出店し、現在は横浜市を中心に35店舗を展開する。売上も着実に成長を続けており、2022年10月期の売上高は571億円となっている。
常盤台店に話を戻そう。筆者歩測による同店の売場面積は約400坪。入口から主通路に沿って、青果、精肉、鮮魚とつなげて、日配、総菜に続くオーソドックスな売場配置で、売場スペース構成比を見ると生鮮が48%と高い。生鮮と日配を合計した売場スペース構成比は67%と、生鮮・日配を主体とした売場であるようだ。総菜を含めた生鮮4部門のスペース構成比では、「青果」が43%、「精肉」が27%、「鮮魚」が21%、「総菜」が9%と、青果を重視した構成であることが一目でわかる。
圧巻の青果売場!
売場を見ていこう。青果は入口左手の壁面72尺のスペースで、リンゴやスイカ、ブドウなどの果実を先頭に、レタスやサニーレタスといったサラダ系野菜につなげ、えんどう豆目、とうもろこし、生姜で最後はもやしを配置する。平台は横16尺、縦6尺のものを5台配置し、先頭2台は旬果実、後方3台で野菜を並べている。調査日は「スイカ1/8カット」(398円、500円)、ブロッコリー(198円)、大根(1本128円)、キュウリ(3本158円)、トマト(2個258円、5個398円)など大きく展開していた。平場の冷蔵ケース34尺ではニラや白菜、きのこ類などを配置する。1品1品の商品管理が非常に丁寧で、「質感」重視の売場となっている。
精肉は「牛肉」「豚肉」「鶏肉」で売場がそれぞれわかれており、小分けパックは少なく大容量商品が多い。牛肉は千葉県産の「5等級黒毛和牛ランプステーキ」(100g650円)、青森県産「5等級黒毛和牛モモステーキ」(100g650円)、栃木県産「5等級黒毛和牛焼肉用」(100g650円)など質感が意識された商品を充実せている。北海道産「牛切り落とし」(400g899円)など均一価格のパックの扱いもある。輸入牛は豪州産をベースに米国、メキシコ産の扱いもあり、品揃えも幅広い。
豚肉も国産をベースに、「ギガ盛」と称した大容量パックを豊富に扱う。随所に米国、カナダ、メキシコ産の輸入豚を差し込んでいるのも目を引かれた。鶏肉では「桜姫鶏」の銘柄肉を扱う。販促では、土曜日限定の「肉祭り」や毎日開催の「大特価」を実施するなどさまざまな施策でお客を飽きさせない工夫が凝らされている。
続く鮮魚売場は、神奈川・三浦港のまぐろ問屋「鈴木水産」が担当する。刺身盛り合わせの扱いがなく、「メバチまぐろ 中トロ」(100g550円)、「真鯛」(100g438円)など限定的なラインナップとなっている。寿司は平台のエンドで「10貫」(780円、980円)、「特上10貫」(1280円)、「まぐろづくし8貫」(780円)などを販売する。売場で目立っていのが塩干物で、「真あじ開き3枚」(380円)、「ノルウェー産サバ文化干し2枚」(450円)、「米国産ホッケ1枚」(398円)などを揃える。三崎港で水揚げされた「生さば」(1尾200円)、「かます」(1尾390円)など丸物の扱いもある。鮮魚専門店の強みを生かし、質と品揃えの豊富さが感じられる売場となっている。
青果専門店出身の自負を感じる売場
生鮮3部門の中で最も注目したいのはやはり青果売場だ。青果専門店をルーツとすることもあって、食品館あおばの青果売場にはほかのチェーンにはない魅力がある。その1つが、先述した商品の扱いの丁寧さだ。常盤台店では、ビニールやフィルムで包んだり、パックに入った商品が多く、商品の見栄えも非常によい。
品揃えの専門性も高く、たとえば壁面のサラダ系野菜では、下段でレタスやサニーレタス、グリーンリーフやグリーンボールなどの葉物を配置し、最上段では「ペパーミント」などのハーブ類のほか、「チコリ」「ベビーコーン」「パセリ」などを配置。各種パプリカやカリフラワー、サラダほうれん草なども揃えており、「サラダ」という括りでこれだけのラインナップがあるチェーンはそう多くない。夏場であるにもかかわらず、きのこ類も充実させており、椎茸や舞茸、えのきなどバンドル販売を含めて約25品目を扱っていたのも驚かされた。
筆者はかつて、横浜市都筑区の人口密集エリアである「センター南」駅の近くにある、「食品館あおばセンター南駅前店」を拝見したことがある。同店の近隣には、ロピアの超繁盛店「ロピア港北東急SC店」があり、激しい競争を繰り広げているが、青果についてはロピアと真っ向から勝負を挑んでおり、対応に渡り合っているように感じた。青果専門店としての自負を感じさせる、専門性を追求する姿勢こそ「食品館あおば」の強さであるのかもしれない。
(店舗概要)
所在地 神奈川県横浜市保土ヶ谷区常盤台22-7
開店日 2022年7月28日
売場面積 約400坪(歩測)
営業時間 10:00~20:00
駐車場 約190台
駐輪場 約120台