「オオゼキ」はなぜ選ばれる? 年商目標40億円のオオゼキ松原店に見る強さの秘密
1万円超の高級魚も揃える
さて、肝心の売場を見ていこう。業界関係者ならご存じの方も多いと思うが、オオゼキは徹底した個店主義をとっていることで知られる。仕入れは各店舗の部門担当者に一任され、市場での買い付けも店舗ごとに行っている。そのため、商品政策(MD)は店によって大きく異なる。
松原店は広い売場スペースを生かし、日常使いの商品に加えて、個店仕入れならではのユニークな商品を各所に差し込んでいるのが特徴だ
まず、生鮮売場で目を引くのが鮮魚だ。平台の冷ケースには旬の魚介類が所狭しと並ぶが、なかには1万円を超える高級魚も。これはお披露目会限定のディスプレイではない。「店舗周辺には小規模の飲食店も多く、旧店舗でも素材の仕入先として使っていただいていた」(売場担当者)ためで、一般家庭向けの大衆魚に加えて、飲食店向けの商材も高級魚を含め豊富に揃える方針だという。お披露目会でも、飲食店関係者と思しき招待客が部門担当者と熱心に会話する様子が見られた。
また青果売場では、「東京野菜」と銘打ったコーナーを設け、東京都下の生産者から仕入れた旬の野菜を訴求。また、有機野菜やイタリア野菜も集積するなど、幅広い選択肢を提供している。
ワインは600SKUを展開
総菜・ベーカリーは自社運営
生鮮以外で特筆すべきはワインの品揃えで、オオゼキ最大規模の約600SKUを展開。フランスワインや国産ワインはもちろん、ギリシャワインや東ヨーロッパのワイン、「ビーガンワイン」といった商品もラインアップに加えて、選ぶ楽しさを演出している。
また、店内製造の総菜とベーカリーは、オオゼキとしては珍しく、いずれも直営での運営。この理由について明瀬雅彦副社長は「直営でやったほうが商品開発の自由度が増して、その店のお客さまのニーズに合った商品を提供することができる」と話す。ベーカリーについても、「(自社運営によって)スーパーの枠を超えたレベルの商品を提供していきたい」(同)として、専門店に負けない本格的な味を追求し、集客装置としたい考えだ。
オオゼキは、関東ローカルの食品スーパー企業の中でも有数の集客力を誇ることで知られる。その背景には、商圏のニーズに合った個店MDだけではなく、競合他社ではなかなか構築できない、従業員と顧客との密な関係性があるのだろう。ECの台頭や業種業態を超えた競争が熾烈化するなかで、オオゼキならではの店づくりの手法に学ぶべき点は多い。