エムアイフードスタイル(東京都/遠藤久社長)は4月5日、クイーンズ伊勢丹杉並桃井店を全面改装した。売場面積を2/3に縮小した分、密度感のある売場となったほか、“伊勢丹”ブランドを前面に押し出したプライベートブランド(PB)商品など、目立たせたい商品にお客の目がいく売場づくりが進んでいる。
ヘルスコンシャスな生活を提案
クイーンズ伊勢丹杉並桃井店は、西荻窪駅より徒歩約15分離れた青梅街道沿いにある2層からなる店舗。改装前は、1階がクイーンズ伊勢丹、2階はユニクロとモスバーガー等で構成されていた。2階と屋上合わせて98台の駐車場を備え、ユニクロの集客力もあって土・日曜は広域からの来店が見られた商業施設だ。
今回の改装では、2階はそのままに、1階のクイーンズ伊勢丹の売場面積を2/3にダウンサイジングして全面改装、同時に空いたスペースにドラッグストアのトモズをテナントで誘致するものだ(トモズのオープンは4/26予定)。改装後の売場面積は約300坪。
クイーンズ伊勢丹は2016年以降、最新パターンの店づくりを進めており、杉並桃井店で5店舗目となる。ただ、これまでの4店舗は駅前立地の店で総菜を徹底的に強化し、大きく打ち出した店が多かったが、杉並桃井店の場合、住宅地立地であることから生鮮3品をしっかりと打ち出した店となった。
取り扱いアイテム数は約8000sku。3000skuほどあった日用雑貨をなくしたことに加え、品揃えを一から見直した。例えば赤白ワインは、改装前は店舗中央でゴンドラで大きな面積を割いて、豊富な品揃えで展開していた。だが、今回は柱周りでワインを陳列するだけに大幅縮小。6〜7割程度に減っているが、単純に絞り込んだのではなく、品揃えを一から見直し、商品は8割ほど入れ替わっているという。
商品政策で重視するキーワードは「ヘルスコンシャスな生活」。無添加や無農薬、糖質オフ、グルテンフリーといった商品を売場で目立たせ、コトPOPなどとともに、お客に訴えかける。
ダウンサイジングしたのに、商品が豊富に見える理由
さて、店内に入ると、真っ先に目に飛び込んでくるのが、クイーンズ伊勢丹のプライベートブランド(PB)商品を立体的に陳列したプロモーションコーナー。この店でしか買えない商品を顧客にアピールする。
青果では、対面コーナーを新たに設置した。ここに人員を配置して掛け声をかけることで、ワクワク感を創出する狙いがある。改装オープン当日は熊本フェアを実施していた。青果では冷蔵ケース側ではOisix商品をトップに配置。やはりこれも「ここでしか買えない」高品質の商品をアピールする。
松阪牛などを取り扱う精肉売場の隣は鮮魚売場。天然真鯛やニシン、メバルなどの丸物のほか、「ひもの工房海鮮屋」コーナーも設置する。刺身では、アニサキスの大量発生に過敏になっているお客への配慮として、「安心にこだわった『超低温加工』です」という大きな手書き風POPを掲示していた。その奥が前述したワインを含む酒売場で、コンコース上に酒類を配置し、食と酒の関連性を高めた作りにしている。
総菜、ベーカリー売場で目立つのも独自性のある商品だ。松坂牛や神戸牛などの黒毛和牛脂を使った国産牛肉コロッケや、八重桜など4色の彩りメロンパン、瀬戸内レモンの塩龍田ドックといった商品を売場の目立つ位置にPOPとともに、陳列。ここでも「この店だけ」を強くアピールしていた。
全体的に、売場面積は小さくなったが、これまで定番棚に埋もれていた独自商品をエンドなどで大きく展開することで、品種の豊富感を打ち出すとともに、賑わい感の訴求ができている。新生クイーンズ伊勢丹がめざす方向として、生鮮強化型の成城石井というとわかりやすいかもしれない。そして、その方向感が杉並桃井店でははっきりと示されていた。既存店売上高はこの3四半期、1月を除きほぼプラスで推移しており、高質食品スーパー、クイーンズ伊勢丹復活ののろしといえるかもしれない。