家庭用手袋市場、物価高騰による買い控えで縮小傾向、厳しい市場環境が続く

文:山田 陽美

2020年をピークに縮小傾向にある家庭用手袋市場。衛生意識の高まりや家庭での炊事・料理時間の増加などを背景に家庭用手袋の需要は拡大したが、使い捨て手袋へのシフトや物価高騰による買い控え傾向もあり、市場は停滞している。

使い捨て極薄手袋は3年連続で販売数量増

 日本グローブ工業会によると、2024年の家庭用手袋の販売数量は7万3253千双で、対前年比1.4%減。素材別ではビニール手袋が3万9246千双で同4.2%減、ゴム手袋が2万4942千双で同1.6%減といずれも減少。

 一方、ニトリル手袋は9065千双で同13.9%増と唯一伸長したものの、全体としてはコロナ禍以降の需要減が続き、対19年比で約8割の水準にとどまった。加えて、物価高騰による買い控えも市場の停滞要因となっている。

ゴム手袋 イメージ
家庭用手袋の需要は拡大したが、使い捨て手袋へのシフトや物価高騰による買い控え傾向もあり、市場は停滞している(i-stock/Andrii Medvediuk)

 こうした厳しい市場環境下でも堅調な動きをみせているのが高付加価値商品。家庭用手袋のヘビーユーザーは使い心地を重視する傾向があり、機能性を高めた商品が好調だ。たとえば手袋の内面に肌触りのよい繊維を使用した手袋や、破れやすい指先を強化したものなどが代表的だ。

 さらに、暮らしに調和するモノトーンカラーなど、従来にないカラーを採用した商品なども登場している。なかでもショーワグローブの「ナイスハンドさらっとタッチ」は、さらっとした快適な肌触りが高く評価され、ユーザーから支持を集めている。

家庭用手袋国内販売数量実績

 一方、使い捨ての極薄手袋の24年の販売数量は、5405百万枚で対前年比6.4%増と3年連続で伸長したが、20年の水準までは回復していない。素材別ではビニール製が1973百万枚で同3.9%増、ゴム製が272百万枚で同2.3%減、ニトリル製が1838百万枚で同5.9%増、ポリエチレン製が1319百万枚で同13.1%増となった。

 コロナ禍を経て衛生意識が向上し、さまざまな場面で手袋の使用は広がっているが、安価なポリエチレン製へのシフトが進んでいる。使い捨て極薄手袋市場はこれまでの特需の反動はあるものの、今後も安定した需要が見込まれている。

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