ロングセラーの成長戦略から考える 売場で選択され続ける秘訣

文:児玉 一穂(日本食研ホールディングス株式会社 食未来研究室室長)

物価上昇が続くなか、食料品は消費全体を上回るペースで値上げが進み、節約志向がいっそう強まっている。その一方で、小売業界の市場ではロングセラー商品の売上構成比が高まっており、半世紀を超えて支持されるブランドもある。

ロングセラー商品が購入され続けているのには、どのような要因があるのだろうか。本稿では2つのブランドを例に、長期的成長を支える戦略を探る。

止まらない物価上昇と節約志向

 食品に関する2025年の最も大きな話題といえば、米の価格高騰を挙げる人が多いのではないだろうか。24年から価格は大きく上昇し、25年4月には23年の約2倍の価格となった。日本人の主食ということや、価格の上がり幅の大きさから米が注目されたが、物価の上昇は米だけではない。

商品棚の前に立つ客
節約志向が強まる一方で、小売業界の市場ではロングセラー商品の売上構成比が高まっており、半世紀を超えて支持されるブランドもある

 帝国データバンクの調査によると、25年通年の値上げは9月までの公表分で累計1万1707品目に上り、前年実績の9割超の水準に到達する見込みであり、値上げの勢いは止まらなそうだ。総務省の「消費者物価指数」によれば、食料の物価指数(以下:CPI)は消費全体のCPIを上回って推移している【図表1】

 食料のCPIが大きく上昇しはじめたタイミングが消費全体のCPIの上昇タイミングと重なることから、食料の物価上昇が消費全体に影響を与えていることが予想できる。

【図表1】 消費全体と食料の物価指数の月別推移

 物価上昇の影響でスーパーの売上金額は伸びているが、売上点数は減少してしまっている。買い控えや節約意識がさらに高まっていくと考えられる状況のなか、どうすれば生活者に選ばれ続けるのだろうか。長年購入され続けているロングセラー商品の動向と購入される理由について見ていきたい。

ロングセラー商品が市場シェアを伸ばす理由

 ロングセラーの定義にはいろいろあると思うが、本稿では10年以上の販売実績がある商品をロングセラーと定義したいと思う。スーパーマーケットには、このロングセラー商品や新商品などさまざまな販売期間の商品があるが、ロングセラー商品はどのような立ち位置にいるのだろうか。

 KSP-POS(食品スーパー)によると、【図表2】が示すように

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