腸活の常識を変える「短鎖脂肪酸」、「短鎖マーク」を通じて生活者にとって身近な存在に

ダイヤモンド・チェーンストア編集部 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア)

腸内環境から健康を維持するためのカギを握る成分として注目されている短鎖脂肪酸。この成分への認知と理解の促進をめざして、2024年11月に短鎖脂肪酸普及協会の立ち上げ発表会が開催され、その後25年3月には短鎖マークエコシステム構想発表会が開催された。

同協会設立の経緯と短鎖脂肪酸の重要性について、代表理事を務める福田真嗣氏に話を聞いた。

多様な働きを持つ短鎖脂肪酸の特長

――まず、短鎖脂肪酸とはどういった物質なのかをお聞かせください。

福田:腸内細菌がもたらす健康効果の多くは、腸内細菌が腸内で作り出す代謝物質が関与していることが近年の研究で続々と明らかになっています。短鎖脂肪酸はその代謝物質の代表格で、腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖をエサにして代謝し、その結果産生される短い脂肪酸の総称です。人の腸内では主に「酢酸」「プロピオン酸」「酪酸」の3 つがつくられています。

短鎖脂肪酸普及協会認定商品第1弾の6商品
短鎖脂肪酸普及協会認定商品第1弾の6商品

――短鎖脂肪酸にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

福田:最新の研究では便通改善のほか、免疫機能の増強や肥満抑制、アレルギー抑制、持久力の向上など、多彩な健康機能が明らかになっています。

 また健康な人においては、現在まで短鎖脂肪酸による悪影響が報告されていない点も特長です。そのため、生活者が「短鎖脂肪酸の産生」を意識することで、結果として医療費の削減や健康寿命の延伸といった社会的課題への貢献も期待できます。

 私が大学で腸内細菌研究を始めた当初から、短鎖脂肪酸の重要性はある程度学会では知られていましたが、一般の生活者の方々には存在も知られていませんでした。

 私自身は短鎖脂肪酸に無限の可能性を感じ、当時からさまざまな企業との連携を試みましたが相手にしてもらえず、悔しい思いもしました。

 それから20年くらいの月日が経ち、メタゲノム解析やメタボローム解析、バイオインフォマティクスなどの科学技術が進展し、短鎖脂肪酸の幅広い健康効果やその作用機序が明らかになってきたことで、近年は注目度が増しています。

――短鎖脂肪酸はどのようにつくられる物質なのでしょうか。

福田:ヒトの腸内には、数百〜千種類の腸内細菌が生息しています。腸内細菌は人間が小腸までの間で消化吸収できずに大腸まで届いた食物繊維やオリゴ糖をエサとして食べることで、酢酸やプロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸を産生します。

 短鎖脂肪酸をつくるには、腸内に短鎖脂肪酸を作り出すさまざまな種類の腸内細菌が存在することと、それらの腸内細菌に食物繊維やオリゴ糖などのエサを届けることが重要です。

認知と理解を深めるべく、短鎖脂肪酸普及協会を設立

――短鎖脂肪酸普及協会設立の目的についてお聞かせください。

福田 真嗣氏
一般社団法人
短鎖脂肪酸普及協会
代表理事
福田 真嗣氏

福田:一般社団法人短鎖脂肪酸普及協会を2024 年8 月20 日に設立しました。われわれは企業や生活者をはじめとするさまざまなステークホルダーとの間を短鎖脂肪酸でつなぐ話者となり、生活者の認知や理解を促進する役割を持つ団体として機能することを目的としています。

 当協会は、メタジェンの代表取締役社長CEO を務める私が代表理事に就任し、京都府立医科大学 教授の内藤裕二氏、北里大学教授の金倫基氏を学術アドバイザーとして迎え、会員企業との連携のもと、短鎖脂肪酸の認知と理解を深める普及活動を展開していきます。

 ミッションとして、短鎖脂肪酸の普及により「腸から新たな健康リテラシーを構築すること」をめざし、これまでの腸活をアップデートし、「腸活の新指標=短鎖脂肪酸」という生活者認知をつくっていくことを掲げています。

――短鎖脂肪酸普及協会では具体的にどのような活動を行っていきますか?

福田:当協会は短鎖脂肪酸に関する研究が進み、生活者の短鎖脂肪酸への認知度や理解度、期待値が高まることで、各企業が社会実装やサービス化をめざしやすくなるといった好循環を生み出し、結果として国民の健康のベースアップにつなげていきたいと考えています。

 取り組みの具体的な柱としては、「1. 先進研究と企業・生活者をつなぐ情報発信」、「2. 生活者が関連商品を安心して選択できるきっかけづくり」、「3. 流通業界との連携による市場拡大」、「4.企業の研究・社会実装の支援」、「5. 行政との協働による普及推進」という5 つを掲げています。

――どんな企業が協会の活動に参画していますか?

福田:25 年6 月現在、正会員として江崎グリコ、カルビー、ホクト、Mizkan、明治の5 社のほか一般会員・賛助会員を合わせて計14 社が参画しています。

3月4日は「短鎖脂肪酸の日」短鎖マーク付き商品も展開

――25年3月に短鎖脂肪酸普及協会認定マーク(短鎖マーク)が発表されましたがそのねらいについてお聞かせください。

福田:「短鎖マーク」は短鎖脂肪酸普及協会が定める一定の基準を満たした研究や試験がなされた製品・原料等に対して、規定のプロセスを経て合格した商品に付与するものです。

 「短鎖マーク」を運用することで、短鎖脂肪酸の重要性を知った生活者が何か行動を試してみたいと考えたときに、選択をサポートする目印になります。本認定マークを受けた商品を持つ事業者は、本マークを商品パッケージやブランドサイトへの掲載などで活用することができます。

 また3月4日を「短鎖脂肪酸の日」の記念日として定めており、今年の3月4日には協会会員企業6商品を協会認定商品第1弾として認定しています。

――「短鎖マーク」の活用によって活動の幅が広がりそうです。

福田:そうですね。当協会では「短鎖マーク」の発表に合わせ、「短鎖マークエコシステム構想」を掲げています。

 短鎖脂肪酸は、腸内細菌と人間が共生するための必要不可欠な因子として体内で機能していますが、これと同じように、「短鎖マーク」は「科学」で見出された最新の知見と人々の「健康」をつなぐための共生因子になると考えています。

 当協会を中心に、メディア、メーカー、流通小売業、生活者などさまざまなステークホルダーがこのエコシステム上で互いに関わり合い、業種・業界を超えてそれぞれの強みを生かして共存共栄していくことをめざしています。

 とくに流通小売業は「短鎖マーク」のついた協会認定商品の購入場所としてはもちろん、スーパーマーケットやドラッグストアなど生活者にとって身近な売場で商品を展開することが、短鎖脂肪酸を知っていただくきっかけとなることを大いに期待しています。

短鎖マークエコシステム構想

――最後に今後のビジョンをお聞かせください。

福田:多くの生活者が腸からのヘルスケアに関心を持つようになった現在、腸内環境研究の最新知見と実社会での購買行動や食生活をいち早くブリッジすることこそが、生活者の真のヘルスケア、さらにはウェルビーイングに大いに貢献すると考えています。

 今後も当短鎖脂肪酸の普及に賛同してくださるメーカー企業の皆様をはじめ、流通業界の皆様との連携を積極的に模索しながら、腸活、そしてヘルスケアを次のフェーズに進めていきたいと考えています。

「短鎖脂肪酸の日」発表会
今年の3月4日の「短鎖脂肪酸の日」には発表会を実施。「短鎖マークエコシステム構想」を発表するとともに、認定商品第1弾の紹介が行われた

記事執筆者

ダイヤモンド・チェーンストア編集部 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア

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