加速するデジタル化の流れ、小売業はどう対処するか?
アドビシステムズ 小売・旅行・CPG業界戦略&マーケティングディレクター
マイケル・クライン
このソリューションは、顧客の購買記録やPOSなどのデータを保管するデータウエアハウスではありません。企業自身が所有するデータ、取引先と共有しているデータ、調査会社など第三者からのデータをプラットフォーム上に集める仕組みです。ソフトウエア業界ではDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)と呼ばれているソリューションです。
プラットフォームにデータを統合することで、顧客像をよりはっきりと見ることができるようになります。そして、そこから得た洞察をもとに、よりよい買物体験を提供することができるようになります。これらソリューションでセグメントしたら、今度はセグメントごとのコンテンツを適合させるわけです。
──最後に、デジタル化を推進する日本の小売企業の中で、注目している企業などはありますか。
クライン 日本はECビジネスにおいて非常に重要な市場です。当社は多くの日本の小売企業と取引をしていますから、その市場の動きは常に注視しています。
たとえば、百貨店業態について関心を持って見ています。多くの百貨店が小型の専門店やファーストリテイリングのような強力なチェーンによって、厳しい状況に置かれていることは承知しています。百貨店が今後どのように課題を克服し進化するかに注目していますし、いくつかの企業とはともに取り組みを進めています。
一方、消費財のECと結び付いたゲーミフィケーション(人を熱中させるゲームの要素や考え方を顧客接点に応用すること)も非常に興味深いと思います。今回来日して感銘を受けたのが、ロハコとオイシックスです。独自のアプリで提供しているサービス内容や、日本の市場で生みだしている効果に興味を持ちました。
このような企業に限らず、デジタル・テクノロジー化をめざす企業はいずれも、人、プロセス、テクノロジーに投資する必要があります。どれかに偏るのではなく、3本足の椅子のように、3つに力を配分投資することが重要です。これには、経営幹部の意識改革が何よりも欠かせません。