正しい知識を学ぶことで食の安全・安心の向上に寄与 食品表示検定協会 湯川理事長

構成:石山 真紀(フリーライター・売場研究家)
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食品表示検定協会が主催する食品表示検定は、食品表示を読み解く力や、適切な表示を行う力を養う認定制度としてメーカーや小売業者、学生など幅広い層が受験している。今期より初級・中級試験にはCBT方式を採用。同協会の理事長を務める湯川剛一郎氏に、協会の活動と食品表示の重要性について話をきいた。

15万人以上が受験、食の品質管理に有用な資格

―はじめに協会の概要についてお聞かせください。

湯川 剛一郎氏
湯川 剛一郎(ゆかわごういちろう)
1976農林水産省入省。食品流通局(現消費・安全局)、独立行政法人農林水産消費技術センター(現FAMIC)企画調整部長、同横浜センター所長、同理事等を経て2008年退職。2008~2012年財団法人日本食品分析センター参与兼テクニカルサービス部長。2012~2018年東京海洋大学・同大学院教授。2018年4月から湯川食品科学技術士事務所所長。2021年4月から一般社団法人食品表示検定協会理事長。専門は、食品表示、食品関連法規、HACCP、食品安全マネジメントシステム等。

湯川 食品表示検定協会は食品表示に関する知識の普及・啓発を行うとともに、食品表示に関する知識を有する人材の育成、資質の向上等を目的に2009年に設立されました。私は設立当初から当協会に関わっており、2021年4月、理事長に就任いたしました。

 食品表示検定は食に関する知識の提供を通じて食の安全・安心の向上に寄与するために実施している検定制度です。

 日々の生活の中で流通する食品は時代を追うごとに多様化しており、食品表示はその食品を正しく理解し取り扱うための情報源として大変重要な役割を担っています。また、メーカーや小売業など、食品を提供する事業者は、常に安全・安心な食品を提供することが求められており、食品に適切な表示をすることだけでなく、消費者に対して表示内容の説明ができる知識が必要となります。

 食品表示に関する法制度は食品表示法の施行により整理されてきました。ただし食品表示基準は数百ページ、さらに基準を解説した消費者庁次長通知やQ&Aも合わせると1000ページ以上にもなる複雑な体系となっています。また、今後も改正され続ける法令について常に最新の情報を入手することは困難です。そういった意味でも食品に関わるすべての皆様に、食品表示に関する学習の機会として食品表示検定を活用していただきたいと考えています。

―食品表示検定はどのような方が受験されているのでしょうか?

湯川 09年からスタートした食品表示検定の累計受験者数は15万2911人、合格者は7万4505人となりました。食の生産、製造、流通等の現場で専門知識が必要な方から一般消費者の方まで幅広く受験されています。

 初級は食品表示の基礎をまとめたもので食品メーカーや流通業の社員、パートタイマーのほか、一般消費者や学生も多く受験されます。中級は食品表示の専門的な知識が含まれるため、商品開発や品質管理の担当者、マネージャークラスの方が多く受験されていますね。上級は食品表示のエキスパート向けで、食品表示を作成する実務者や品質管理部門の責任者、食品表示に関する機関やコンサルタントが受験されています。

 近年、当検定の受験を推奨する企業や団体も増え、合格者に与えられる食品表示診断士の肩書を名刺に入れる方も見かけるようになりました。また食品表示診断士の資格を採用の応募条件とする企業もあり、品質管理のための有用な資格として活用されています。

食の「安全」と「安心」の違い
消費者に正しい情報を伝えるために

―試験について、今回よりCBT方式(Computer Based Testing)を採用されるそうですね。

湯川 はい。これまで、食品表示検定は全国統一の試験日にペーパー方式で実施していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、20年6月の初級・中級試験は中止となりました。それ以前も自然災害等で試験会場に来られなかった受験者もいたことから、22年度以降の初級・中級試験についてはコンピュータによるCBT方式に移行することとなりました。この試験は全国300カ所以上あるテストセンターの中から自身で会場を選択し、約3週間の試験期間内から希望の日時を選んで受験予約ができます。

 なお上級試験については記述解答が主であるため、今までと同じペーパー方式での試験となります。

食品表示検定CBT方式

―検定試験に向けた学習方法についてお聞かせください。

湯川 食品表示検定認定テキスト・問題集は、全国の書店やオンラインストアで購入できます。テキストは法改正の項目追加や事例の内容も細かく見直しながら初級、中級のテキストを2年ごとに交互に改訂を行っています。受験のためのオンデマンド講座や公開講座、企業・団体向けの派遣セミナーも行っていますので、活用していただきたいですね。

 また検定用テキストは食品表示の参考書としての側面もあります。店舗や職場に置くことで食品表示に対する知識が深まりますし、消費者に正しい情報を伝えるための手段として役立つでしょう。

―メーカーや小売業にとって、食品表示の重要性はどこにあるでしょうか。

湯川 食品表示は、消費者が商品を選択するうえでの有用な情報源であると同時に、メーカー・流通業の手から離れた後も見ることができる消費者へのメッセージであると考えています。

 私自身、HACCPや食品安全マネジメントシステム等を専門としていますが、食品の安全や品質管理を扱う部署と食品表示を扱う部署が連携していないメーカー・小売業が多いように感じています。

 よく「食の安全・安心」という言葉が使われますが、食品表示において「安心」と「安全」はまったく別のものです。消費者は、原産国や遺伝子組み換えといった表示に敏感に反応しますが、これは「食の安心」の部分にあたり、「食の安全」は消費期限やアレルギー表示といった、食品の衛生に関わるものを指します。

 消費者に正しい情報を伝え、購入後、正しく食品を扱っていただくためにも、メーカー・流通業の方々にはぜひ食品表示の正しい知識を培っていただきたいと思います。

―最後に協会の今後の方向性についてお聞かせください。

湯川 食品表示制度は変化し続けており、正しい表示を行っているつもりでも誤表示となる恐れがあります。当協会は食品表示に関する最新の知識を受験者の皆様にお伝えし、多くの方に食品表示検定を利活用していただくことで、食の安全・安心の向上に寄与していきたいと考えています。

食品表示検定認定テキスト・問題集のご案内

食品表示検定のWEBサイトはこちら

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