群雄割拠がついに終焉? 決算ランキングから読み解く食品スーパーの現在地

中井 彰人 (株式会社nakaja labnakaja lab代表取締役/流通アナリスト)

『ダイヤモンド・チェーンストア』誌では、毎年7月1日号で「決算ランキング」特集が組まれている。掲載されている主要データはダウンロードも可能で、筆者自身、毎年ありがたく活用させてもらっている。食品スーパー業界の主要企業がほぼ網羅されているうえ、これに有価証券報告書を公表しているオーケー(神奈川県)の数値を加えると、国内大手の動向をざっと俯瞰できるからだ。掲載データは、ただの数値の羅列に見えるかもしれない。だが、いくつかの指標を重ねてみると、業界の地殻変動が意外なほどくっきりと浮かび上がってくる。今回も注視している指標を参考にしつつ、その印象を綴ってみたいと思う(図表は一部独自集計による)。

※8月27日付で掲載した本記事の図表5-2(売場面積当たり売上ランキング)に掲載した数値に誤りがあったため、修正のうえ公開しました(8月29日13:00)。原因は当社編集部の作業ミスおよび確認不足によるものであり、著者の中井彰人様には一切の責任はございません。関係者の皆様に多大なるご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

kasto80/iStock

営業収益ランキングで増収となった企業は……?

 まずは営業収益のランキングからみていこう(図表1)。上位にはライフコーポレーション(大阪府)、イオン系列のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都:以下、U.S.M.H)、同じくイオン系のフジ(広島県)など、大手傘下のチェーンが並んでいる。とはいえ、そのすぐ下にはヤオコー(埼玉県)、オーケー、アークス(北海道)、ヨークベニマル(福島県)、バローホールディングス(岐阜県:以下、バローHD)、ベルク(埼玉県)といった、独立系の有力企業も顔をそろえている(※持分法適用会社は独立系として扱う)。

図表1
図表1

 近年、イオングループが地方スーパーの再編を加速させており、U.S.M.Hやフジのように、複数企業を統合した広域子会社も生まれている。一方で、こうした再編に頼らず、自力で事業を拡大してきた企業も少なからず存在することも忘れてはならない。

図表2
図表2

 図表2は、19年度から24年度にかけての営業収益の増加額で並べたものだ。ここでは、ヤオコー、オーケー、ベルク、ライフといった、首都圏を地盤とする企業が圧倒的に目立つ。U.S.M.Hによるいなげやの統合も加味すれば、首都圏でのシェア集約が急速に進んでいる構図が浮かび上がる。加えて、JMホールディングス(茨城県)、サミット(東京都)、マミーマート(埼玉県)といった企業もその下に名を連ねており、マーケット規模に恵まれているとはいえ、首都圏の競争環境が一段と激化していることが読み取れる。

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記事執筆者

中井 彰人 / 株式会社nakaja lab nakaja lab代表取締役/流通アナリスト

みずほ銀行産業調査部シニアアナリスト(12年間)を経て、2016年より流通アナリストとして独立。

2018年3月、株式会社nakaja labを設立、代表取締役に就任、コンサル、執筆、講演等で活動中。

2020年9月Yahoo!ニュース公式コメンテーター就任(2022年よりオーサー兼任)。

主な著書「小売ビジネス」(クロスメディア・パブリッシング社)「図解即戦力 小売業界」(技術評論社)。現在、DCSオンライン他、月刊連載6本、及び、マスコミへの知見提供を実施中。東洋経済オンラインアワード2023(ニューウエイヴ賞)受賞。起業支援、地方創生支援もライフワークとしている。

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