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22年度業績は増収増益の三井食品、23年度の戦略とグループ内合併のねらいは?

食品卸大手の三井食品(東京都/柴田幸介社長)は629日、20233月期の連結業績を発表した。外食産業向け販売の好業績がけん引し、233月期は増収・増益に転じた。243月期は「首都圏東物流センター」(千葉県流山市)と「新横浜センター」(神奈川県横浜市)が新たに稼働予定で、物流機能の強化により人件費を含めた物流コストの削減をねらう。

外食向け売上は対前期比19.7%増

 三井食品の233月期の連結決算は、売上高が対前期比1.9%増の6768億円、営業利益は同114.9%増の7億円、経常利益は同80.9%増の9億円、当期純利益は同13.2%増の6億円だった。

 外食業態の大幅な売上回復と商品価格の値上げにより、売上高は前期から同125億円増加した。販売費および一般管理費(以下、販管費)は同35000万円増となったが、低採算取引の見直しが奏功し、営業利益は同4億円増となった。

 業態別売上高では、「外食」が同19.7%増と最も伸長したほか、「ドラッグストア」が同3.9%増、「GMS」が同2.5%増だった。一方で、「ホームセンター」が同10.3%減、低採算取引の見直しを行った「食品スーパー」と「ディスカウントストア」がそれぞれ同10.5%減、同4.1%減と伸び悩んだ。

 カテゴリー別売上高では、外食業態の好調により「酒類」が同3.9%増、「加工食品」が同1.5%増となった。前期実績を下回ったカテゴリーは2つで、「菓子」が同17.5%減、「飲料」が同0.7%減だった。

 243月期の業績予想では、売上高が対前期比1.8%増の6891億円、経常利益が同76.1%減の2億円、当期純利益が同82.7%減の1億円を計画している。

 経常利益は、粗利益率の改善や物流コストの削減による同14.6億円の増益を見込むものの、243月期中に稼働予定の「新横浜センター」立ち上げにかかる設備投資の同21.6億円の減益を差し引きし、同7億円減の減益予想となっている。

柴田幸介社長

21年に『近畿統合物流センター』(大阪府交野市)を開設するにあたり想定以上にコストを要したことから、新たな物流センターを稼働する243月期の利益予想は慎重に考えた。値上げによる需要の冷え込みや、人手不足を要因とした人件費の増加も見込み、保守的な数字を据えた」(柴田幸介社長)

新たな物流センターが稼働!

 三井食品は243月期、物流機能の強化に取り組む。238月に本格稼働予定の、同社最大規模となる約4.5万坪の延床面積を有する「首都圏東物流センター」は大幅な省人化を可能にし、今後見込まれる人手不足や人件費高騰などの問題解決に寄与する。さらに243月期中には「イトーヨーカドーネットスーパー」の物流業務を受託する「新横浜センター」が稼働予定だ。

 他社との差別化を図るため、オリジナル商品にも力を入れる。缶詰や調味料、飲料やデザートなどを販売するメインのオリジナルブランド「ハートフル畑」の強化に加え、新たに「にっぽん元気マーケット」ブランドを243月期中に立ち上げる。

 「にっぽん元気マーケット」は、もともと東日本大震災の復興支援として東北地方のメーカー商品を全国に広めるためのブランドとして登録した商標だった。243月期は「にっぽん元気マーケット」をオリジナル商品のブランドとしてリニューアルし、地域共創を目的にオリジナル商品をラインアップしていく。

 従来から取り組んでいる、ペルー産みかんなど付加価値の高い果実や野菜を輸入するアグリビジネスも拡大する。23年夏以降は、農業関連商材の開発・販売を行うグループ会社、三井物産アグロビジネス(東京都/小島洋之社長)から青果事業の移管を受け、集荷した産地直送野菜を小売企業へ配送する事業も開始する。

 なお三井食品は2020年の組織再編以降、持株会社の三井物産流通ホールディングス(東京都/植田勲社長)にぶら下がるかたちとなっている。2441日には、三井物産流通ホールディングス傘下のリテールシステムサービス(東京都/伊藤誠一社長)、ベンダーサービス(同/久保田創一社長)、物産ロジスティクスソリューションズ(同/工藤由普社長)と三井食品の4社が合併する予定だ。253月期から発足予定の新会社の名称は「三井物産流通グループ株式会社」(仮称)となっている。

 グループ各社の業績を単純合算すると、売上高14000億円、資産3200億円、従業員3150人の規模になる。組織を再編し、人材の流動的で適切な配置を行うねらいだ。

 柴田社長は「持株会社に各社がぶらさがる現状の体制だと、思い切った施策をとりづらい。合併により大胆かつスピーディに動ける会社にしたい」と話す。