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EC起点の「LOWYA」が今、リアル店舗を急拡大している理由とは?

家具・ホームファッションの「LOWYA」(ロウヤ)事業を展開するベガコーポレーション(福岡県)。若年層から高く支持されている同事業は2004年の創業以来、ECを起点として成長してきたが、23年からはリアル店舗を積極的に出店している。浮城智和社長にLOWYAの成長戦略、今後の展望について聞いた。

売上の9割が自社企画商品

―まず、事業概要を教えてください。

浮城 当社は2004年に設立し、現在の売上は約160億円になる。中核である家具・ホームファッションECの「LOWYA」事業のほかに、全世界に向けて国内メーカーなどの商品を販売する越境ECの「DOKODEMO」事業も手掛けている。

 LOWYAの売上の9割程度はプライベートブランドが占める。23年2月からリアル店舗を出店して、OMO戦略(オンラインとオフラインの融合)にも取り組んでいる。新たにリアル店舗のチャネルを追加したのは、お客さまの「実物を見たい」というニーズへの対応と、最近はリアル店舗中心の企業もECに取り組むところが増えてきたからだ。

LOWYAの自社企画商品
LOWYAの売上の約9割は自社企画商品。購入者の約8割が20代、30代となっている

 製造は海外の数十社の取引工場に委託し、毎月約150コンテナの商品を輸入している。基本的に商品企画からインターネット上の販売までを一気通貫で手掛け、コスト削減とスピードアップを図っているのが特徴だ。

 内製化する公式アプリやSNSの運用が集客の要で、スマホアプリは累計160万ダウンロードされ、現在のInstagramのフォロワーは111万人、TikTokは30万人、YouTubeの登録者は15万人で、合計すると約156万人になる(24年11月末現在)。顧客の年齢層は20代が55%、30代が25%で全体の8割を占め、男女比は1:2くらいだ。

 LOWYAでは、WebやSNSなどに上がる多くのお客さまの要望に真摯(しんし)に耳を傾け、常に商品の改善を進めてきた。スピーディーなPDCAサイクルが成長につながったと考える。当社の情報発信がバズる理由をよく聞かれるが、常にお客さまの潜在的なニーズの発掘に努めているからだと思う。

浮城智和氏
浮城智和●うきしろ・ともかず
1976年11月生まれ、福岡県出身。19歳でインターネットに出会い20代でその可能性を探るため意図的に複数の業界を経験。
家具インテリア業界のEC化に着目し、2004年7月にベガコーポレーションを創業、代表取締役社長に就任(現任)

―家具のEC事業を始めたのはどうしてですか。

浮城 最初からECの将来性に注目していた。家具の卸売会社で働いていたときに、家具店はどこも家具の全色の在庫を揃えているわけではないことを知ったのが、今の事業を始めるきっかけになった。お客さまは実際の商品を見なくても、店頭にない色の商品を注文する。そこで家具はECに向くとピンと来た。全商品の在庫がなくてもいいのなら、資金が少なくてもできると考えた。

 しかし、家具に対してお客さまからいろいろ要望があっても、メーカーはなかなか対応できない。それにしびれを切らして、ならば思い切って自社ですべてやろうと、07年に企画から販売まで一貫して取り組むようになった。海外と直接取引を始めると、利益率が跳ね上がり、それが転機になった。

―当初、自社サイトと、「楽天市場」などのECモールをどのように使い分けていますか。

浮城 06年くらいから自社サイトは持っていたが、十分なものを開発するには大きなコストがかかり、一気には投資できなかった。そこで、当時の資本金300万円という限られた条件で手堅く利益を出すために、まずECモールに出店した。

上場後に襲った3つの試練

―16年には東証マザーズに上場しました。上場まで経営は順調でしたか。

浮城 設立から上場までの間は、今ほど競合が激しくなく、家具市場も好調に伸びていたので、当社もそれなりに成長した。むしろ、苦労したのは上場後だ。

 まず、ECモールで得た利益を自社サイトへの投資に回した。ところが、18年に物流クライシスが顕在化し、宅配料が一斉値上げして、19年3月期は初めて営業利益が約3億円のマイナスになった。そのため、19年くらいまでは自社サイトへの投資も削って、いろいろなコスト削減でしのいだ。

 その後、ようやく体制が整った時期にコロナ禍になり、巣ごもり需要でECモールの売上が対前期比で40%増えた。さらに、自社サイトの売上は同110%増と倍増した。この自社サイトの伸びを実力だと思ったのがミスジャッジになった。伸びた分をそのまま投資に回したが、結局、特需の反動減となり、裏目に出た。それが21~22年ごろのことだ。

 それも乗り越えて、さあ攻めようと思っていたら、23、24年と今度は急激な円安が来た。そこで、またコスト削減に努め、どうしても吸収しきれないところは商品価格にも転嫁した。その結果、24年3月期は、売上は微減の156億円、営業利益は約8億円で大幅に回復した。

 今期に入って円安がさらに進み、再度の値上げに踏みきった。それに対するお客さまの反応は厳しく、上期はモール売上がショートした。

 しかし、直営系の自社サイト、自社アプリなどの売上はほぼ計画どおりに動いている。今後はどんな環境下でも自社サイトの売上を伸ばせるようにして、直営系の売上を成長エンジンにしたい。

自社サイトECを「旗艦店」と呼ぶなど、主要販売チャネルとして投資し続けている

―LOWYA事業は、コーディネートや使い方を上手に提案する商品の見せ方に定評があります。どのような工夫をしていますか。

浮城 自社で商品写真を撮影し始めたときから、家具の裏側はどうなっているかなど、よくお客さまから聞かれそうなことは、あらかじめ明示してきた。ECのいい点は先にいろいろ説明しておけばセルフ販売できるところだ。店員が少ないリアル店舗よりも詳しい商品情報がわかる。当初からそこでリアル店舗と差別化することを意識してきた。

 

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