非常識だからこそやる!リアル店舗の価値を具現化するプロショップ「プラスワン」のねらいとは

聞き手:高浦佑介 (ダイヤモンド・ホームセンター編集長)
Pocket

情緒的な価値も売場で表現

──売場づくり、商品政策について、注力したポイントはありますか。

笠原 基本的には長野店を踏襲した。信州箕輪店も本館と資材館の2つがあり、本館は工具・金物・ワークウエアが中心で、プロ向けのクオリティにこだわった専門性の高い品揃えを特徴としている。什器の高さを場所によって変えることで売場全体を広く見せるようにしたり、カラーコントロールを意識した陳列に取り組むなど、女性客からも支持されるような空間演出に力を入れている。

 資材館はお客さまの利便性を重視して、トラックに乗ったまま売場に入って、必要な商品を積み込んで、セルフレジで会計するというドライブスルー方式をとっている。資材館の品揃えは、木材、ブロック材、石材など、長野店の約2倍になるように拡大した。

 積み込みのサポートもしない分、ホイストクレーンを新設して、より便利に買物してもらえるように設備を整えた。電動工具、機械のレンタルサービスも実施している。

──そのほか店舗づくりでとくにこだわったところはありますか。

笠原 いちばんは駐車場だ。

 駐車場には四季を意識した植栽を行っている。金木犀、藤、山茶花、梅、クルメツツジを植えてあり、春夏秋冬で咲く花が変わる。夏場を除いて、それぞれの季節ごとに違う香りがここから広がっていくはずだ。また、5年後、10年後、20年後となったときに、店舗を取り巻く景色も変わってくる。

──確かに、それは楽しみになりますね。

笠原 たとえば藤の花が咲いているからここに来る。買物目的でこの店に来てもらいたいということもあるが、そういうお客さまばかりでなく、「そろそろ、あの花が満開だから見に行ってみよう」、その帰りに「何か買物をして帰ろうか」、そんなふうに記憶の中に、少しでも残ってくれればいいかと考えた。

矢崎 接客なし、無人決済という無機質な部分もあるが、その一方で、ビジュアルにこだわった緻密な売場づくりや駐車場の植栽など情緒的な価値も重視したい。それがリアル店舗の価値につながる。

──信州箕輪店で得られた知見を既存店にも生かしていくという考えはありますか。

矢崎 僕らはチェーンストアをやっているわけではないので、個店個店が違っていい。単店レベルで黒字を出していきたい。

 長野店をオープンして7年半がたつ。今は同じ店ではもう古いと思っているから、今回も新しいことにチャレンジした。塩尻店、岡谷店もいずれ建て替えることになると思うが、信州箕輪店のようにするとはかぎらない。商圏特性と時代の変化に合わせて対応していくことが重要だと考えている。

女性活躍のモデルになる

──笠原さんはレジ打ちのパートからいきなり店長になられましたが、そのときの心境を振り返るといかがでしたか。

笠原 社長から「新店を出すから一緒に来てやってみないか」と言われたのが最初で、まさか店長としてとは思わず、軽い気持ちで「行きたい」と答えた。

 店長というと「男性がするもの」というイメージが強かったが、女性にだってできる。それを自分が証明したいというか、自分でもできるんじゃないかと考えた。プラスワンの中だけでなく、社会全体でこれからどんどん女性が活躍していく時代になる。自分もその後押しをしたい。

──実際にオープン以降の手応えはいかがですか。

笠原 まだ店長らしいことはできていないが、周りの皆さんに意見を聞くことを意識しながら、毎日試行錯誤している。ほかの従業員とも「こうしよう」「ああしよう」「こうじゃないか」「ああじゃないか」と積極的にコミュニケーションをとっている。

──今後の抱負について教えてください。

笠原 どういうものになるのかわからないが、私なりの店づくりを見つけていきたい。「非常識だからこそやる」がプラスワンのモットーなので、女性だから、知識ゼロだからこそ気づくこともあると思う。

プラスワン会社概要

1987年7月に山梨県の沢田屋のホームセンター部門として設立。96年岡谷店、99年塩尻店をオープン。2003〜04年に塩尻店を資材・工具・金物・電材・水管・作業衣料・消耗品の専門店へと業態転換。06年に岡谷店も業態転換。16年10月長野店をオープン。「STORE OF THE YEAR2017」で第1位獲得。24年4月 23日「PLUS ONEⅡ信州箕輪店」をオープン。現在、長野県内で4店舗を運営する

PR

プロショップ

ダイヤモンド・プロディーラー創刊号6月15日発売、1100円(税込)
創刊号は「職人を輝かせるプロショップ」をお届け!冊子版と電子版がございます。

購入ページへ

1 2

聞き手

高浦佑介 / ダイヤモンド・ホームセンター編集長

2010年東京大学文学部卒業、12年同大学院修士課程(社会心理学)修了。14年ダイヤモンド・リテイルメディア入社。『ダイヤモンド・チェーンストア』誌の編集・記者を経て、19年4月よりダイヤモンド・ホームセンター誌編集長。ホームセンター業界のトレンドに精通しており、TV・ラジオなど数々のメディアに出演するほか、ダイヤモンド・リテイルメディアYoutubeでも業界解説動画を配信している。

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態