「クックマート」のローカルスーパー第三の道 地域×HR戦略が地方チェーンを面白くする

大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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「クックマート」モデルで
地方のチェーンを活性化

――22年、持株会社デライトホールディングス(愛知県/白井健太郎社長:以下、デライトHD)を発足しました。ねらいを教えてください。
白井 以前は社名が「デライト」、店舗名が「クックマート」だったのを、22年9月、投資ファンド会社マーキュリアインベストメント(東京都/豊島俊弘社長)と戦略的資本業務提携を結んだことを機に、持株会社「デライトHD」と事業会社「クックマート」に整理しました。

 位置づけとしては、クックマートでは、引き続き地域で最高のローカルスーパーとして競争力に磨きをかけ、さらなる出店も重ねて事業成長を図っていきます。一方のデライトHDでは、「クックマート」の組織づくりや店舗運営のノウハウをモデルに、これからの時代に合ったローカルチェーンストアのHR(人事)周りを体系化し、必要とされるその他のチェーンに応用展開すること、また、ローカル同士の交流を通じて全国に面白いローカルスーパーを増やせないかと考えています。

――ローカルスーパーが投資ファンドから成長のための出資を受けるケースは珍しく、話題となりました。実際に提携されてから感じていることはありますか?
白井 ファンドの活用は、ローカルの弱点を解消するための手段という位置づけです。人材や情報の面で大きな飛躍となりました。提携を通じて企業成長を図ることはもちろんなのですが、異業種や外部と対話することで、業界やローカルの「内向き」な視点から脱却し、よりクリエイティブで独自の存在になりたいと考えています。

 マーキュリアさんは長期的な視点を持ったファンドで、デライトのやりたいことを尊重し、応援してくれています。私の考えを話すと、彼らなりのサジェスチョンをくれて、その対話自体が私にとっては面白いんですよね。

 ただしファンドと組んで経営していくには、事業会社側にファンド側の合理性と対話できるだけの強い「個性」や「ビジョン」が必要だと思います。意思決定をして事業を成長させていくのはあくまでわれわれであり、ファンドはそれを支援するパートナーです。ファンド側の提言やサポート、ネットワーク、知見を活かすも殺すも当社次第ということを強く意識しています。

――デライトHDでは、「クックマート」モデルのその他チェーンストア企業への導入や、賛同してくれた企業とのグループ化や提携・連携などを見据えています。
白井 「クックマート」の組織づくりや店舗運営のノウハウは、ローカルスーパーにとどまらず、人口減少や成熟経済、地方創生、人的資本経営など、これからの時代ともシンクロする普遍的な価値を持っていると考えています。

 とくに、クックマートが推進してきた「ローカルの普通の人々」のマネジメントは重要なことにもかかわらず、これまであまり真剣に考えられてこなかったように思います。高度成長期の延長で、東京をはじめとした都心部や、エリートを真ん中に据えたビジネス理論が中心だったからです。

 しかし、実は国内人口の多くが「ローカルの普通の人々」であり、この層を活性化することが重要です。地方でローカルに魅力的な企業が増え、都心部でなくとも面白い仕事ができることは、これからの日本社会のためにも重要だと考えます。

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記事執筆者

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。

最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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