三菱商事(東京都/中西勝也社長)、 KDDI(東京都/髙橋誠社長CEO)、 ローソン (東京都/竹増貞信社長)の3社は、2月6日、新たな価値創出に向けた資本業務提携契約を締結すると発表した。
これに伴い、三菱商事とKDDIはローソンの非公開化に関する取引に合意。 KDDIはローソンに対する株式公開買付け(TOB)を実施し、三菱商事と KDDIは、ローソンの議決権を 50%ずつ保有する共同経営パートナーとなり、ローソンの企業価値向上に3社で取り組んでいく方針を明らかにした。
ローソン株式取得に
約5000億円
ローソンと三菱商事、KDDIはこれまでも関係性を強めてきた。三菱商事は2000年にローソンと業務提携を開始し、17年には同社を連結子会社化。現在は、ローソン株式を50.1%超持つ親会社だ。
KDDIとローソンは19年、顧客基盤を生かしたデータマーケティングの推進や先端テクノロジーの活用による新たな消費体験の創出をめざし、資本業務提携を締結。ローソンの発行済株式総数の2.1%を取得していた。
今回、KDDIは24年4月頃よりTOBを開始し、成立後スクイーズアウト(株式を強制的に買い取るなどの手法により少数株主をなくすこと)手続きを行い50%までローソンの議決権保有率を高める。ローソン株式取得のための金額は約4971億円を見込む。
本提携を通じて、ローソンのもつ店舗やリアルな顧客接点、KDDIが有する生活者とのデジタル接点や先端テクノロジーを掛け合わせることで、生活者のあらゆるシーンに寄り添う「未来のコンビニ」をめざすという。
通信、デジタル技術生かし
グローバルで戦える企業へ
今回の提携は23年5月に、三菱商事のほうからKDDIに提案を持ちかけたという。三菱商事の中西勝也社長は「これまで三菱商事としてさまざまな連携をローソンと図ってきたが、変化の速い時代で、今後は異業種との競争も激化するなか、当社だけでローソンの価値を高めることができるのか悩んでいた。そうしたなか新しいコンビニの形を改めて考え、今回の提案に至った」とは話す。
本提携によってローソンは所定の手続きを経て、上場廃止となる。今回の提案を受け入れた理由を竹増貞信社長は次のように語っている。
「ローソンは、主力のリアル店舗事業に加えて今後、全国の店舗網を生かし注文から15分程度で商品を届ける、スピードを武器にしたEコマース(いわゆるクイックコマース)にも本格的に参入する。これを両軸に据え、さらには(すでにグループとして事業を行う)エンターテインメント、食品スーパー、金融事業も包括し、グローバルに展開していく企業をめざす。これを実現するには基盤として通信、デジタル技術が必要不可欠だ。そうしたなか今回の提案をいただきKDDIさんの存在はローソンが描くビジョンを大きな支えになると考えた」と話している。
auショップで
ローソンPBの販売も
KDDIを共同経営パートナーに迎え、ローソンでは今後、どのようなシナジー効果を見据えているのか。
KDDIは携帯電話事業を中核に、銀行や保険、 旅行、デリバリーなどの事業のほか、「auスマートパスプレミアム」という約1300万人以上の会員数を誇る日本最大級のサブスクリプションサービスを展開している。
ローソンは全国約1万4600店のコンビニ店舗のほか、食品スーパーの成城石井事業や、チケット販売や映画館運営等のエンタテインメント事業、「ローソン銀行ATM」サービスなどを行う金融事業などを展開している。
これら両社の持つ資源をいかし、リアル、デジタル、グリーンの3つの領域において連携を検討していくという。なかでも注目のリアルとデジタル領域では下記のような取り組みを検討していくという。
【リアル領域】
ローソンの約1万4600の店舗と、KDDIの「au Style」「auショップ」などの約2200拠点も合わせて、両社で1万6800店のリアル店舗ネットワークを構築し、店舗の機能強化や店舗網のさらなる拡大により利便性の向上めざす。
たとえば、auショップにおけるローソンのプライベートブランド(PB)商品や「ローソン銀行 ATM」 といったサービスの取り扱い。ローソン店舗における、 KDDIの商品やサービスの取り扱い(通信関連商材や 銀行・保険 、ヘルスケア、モビリティサービスなど)のほか、リモート接客の導入などを検討しているという。
【デジタル領域】
KDDIの通信契約者約3100万人、 ローソンの1日の来店客数約1000万人など、両者が持つ顧客データや購買データを連携させることにより、国内最大級の顧客データ基盤を構築し、これを活用することで、ローソン利用者のロイヤリティ向上をめざす。
たとえば、ローソンの送客につながる特典や利便性を提供する、KDDIおよびローソンの利用者向けサービスの開発、KDDIの デジタルの知見や技術の提供によるローソンの店舗オペレーションの最適化などを検討していく。
記者会見では動画やスライドなどを交えて、未来のコンビニで実現をめざしたいサービスが紹介され、店舗で行うサービスの例として、スマホのサポート、オンラインでの服薬指導、家計の相談などの窓口の設置、ドローンを使った遠隔地配送サービスなどが挙げられていた。
「ローソントップは従来通り三菱商事側から」
Ponta事業をいっそう強化する
KDDIの髙橋誠社長は「竹増社長はビジョナリストであり、未来のコンビニの構想を伺ってわれわれも非常にワクワクしている。また、グローバルな成長をめざすという点では当社にとっても成長機会につながる」と述べている。
今回、KDDIは共同経営パートナーとなったものの「小売の分野の知見はない。小売の価値を発揮するために当社の技術を使っていただくという立ち位置だ。ローソンのトップは今までどおり三菱商事さん側から出すという形で理解いただければ」と述べている。
またKDDIは19年にローソンと資本業務提携を結んだ際に、旧共通ポイント「au WALLET ポイント」を、ローソンが導入する「Ponta(ポンタ)」に統合し、さらなる経済圏の拡大にともに取り組んできた。今回の提携を機に「やはりPontaは強化していきたい」(髙橋社長)と言及している。
テック分野を加速
いつかGAFA“L”に
コンビニ業界は、かつての積極出店による成長が限界を迎え、既存店の売上を高める新規サービスや新規事業の開発など、新たな成長施策が求められている。
そうしたなかセブン-イレブン・ジャパン(東京都)は、コンビニ店舗からの商品配送サービスや、スーパーストア事業のノウハウを組み合わせた新コンセプト店舗の出店を、ファミリーマートはリテールメディア事業への本格参入など、次なる成功施策に動き出している。
そしてローソンが次なる切り札として発表したのが今回の提携だ。ローソンは大手3社で唯一、通信事業会社を経営パートナーに持つ存在となる。
竹増貞信社長は「今回の提携でテック分野におけるスピードを追求していく。中長期的な未来像では、究極的にはコンビニとECであらゆる買い物が成り立つ世界を想像している。将来的に現在のGAFAM(※)のように、いつかGAFA“L”(L=ローソン)と言われるような存在をめざしていきたい」と語っている。
KDDIとの提携によって、デジタル技術を活用したサービス開発や事業モデル改革を一気に加速させることを打ち出したローソン。まずはどのようなサービスから着手していくのか、その動向に期待したい。
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