第119回 ショッピングセンターも“週休2日”の時代へ! 持続可能な営業体制とは

西山 貴仁 (株式会社SC&パートナーズ代表取締役)

業種特性に応じた柔軟な営業時間設計を

 これまで多くのSCや商業施設で開店時間を午前10時に揃える運営が一般的だったが、近年では業種ごとに開閉店時間を柔軟に設定する動きが広がりつつある。これまで「右に倣え」の意識が強かった日本においても、社会の変化を背景にその意識に変化が見られるようになってきた。

 そもそも、営業時間の統一に強くこだわるのは日本特有の傾向であり、海外では開閉店時間がバラバラの施設は珍しくない。もちろん、全店舗が同一の営業時間・営業日を設定している方が顧客サービスの観点からは望ましい。しかし、現実にはその実現が難しくなっていることは、周知のとおりである。

 業種や業態によって、最適な営業時間や営業日数は異なる。たとえば、飲食店にとって午後のアイドルタイムは集客が難しく、営業していても費用対効果が見合わない。また、旅行代理店ではシステムが稼働しない時間帯に営業しても意味をなさない。アパレルについても、12月31日に商品を求めるお客は限られている。

 このように、業種によって繁忙期や閑散期が異なる中で、すべての店舗に統一した営業時間を適用する運営形態は、生産性の面で課題が多いことは広く認識されている。画一的な運営を前提とする日本的な経営スタイルも、見直しの時期を迎えているといえる。

価値観の変化が問う「働き方」の再定義

 「働くことは美徳である」という価値観は、日本社会に深く根付いてきた。一方、日曜日を安息日とするキリスト教圏では、労働に対する考え方は異なる。宗教、道徳、文化、風習、歴史、気候、風土、法律など、市民生活の基盤にある要素が働き方や労働時間のあり方を形成してきた。

 しかし、これからの日本は、そうした従来の前提とは大きく異なる局面に直面している。最大の要因は、少子化である。年間出生数が70万人を下回る現在、従来の生活様式や働き方をそのまま維持し続けることができるかどうかは、極めて不透明だ。

 したがって、今後は休業日を増やしても採算の取れるビジネスモデルへの転換が求められる。それはSC事業に限らず、あらゆるサービス業に共通する課題となる。

 たとえばデンマークでは、郵便配達サービスが終了し、ポストの撤去も進められている。デジタル化の進展と人口減少という構造変化を前に、社会の在り方を見直す取り組みは、もはや避けて通れない状況にある。

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記事執筆者

西山 貴仁 / 株式会社SC&パートナーズ 代表取締役

東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員。201511月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒

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