マレーシアにカンボジア……書店の海外展開を加速するTSUTAYAのねらいとは
中国・台湾とは市場がまったく違う

カンボジアでFC契約を結んだのは、アメリカ・フィラデルフィアで学んだ創業者のキム・リアン・キーン氏が、不動産デベロッパーとして2016年に設立したUrban Living Solutions Co., Ltd.(ULS)。松下氏は「話をする中でもライフスタイル、コミュニティといったキーワードが数多く出てきて、価値観を共有できていると感じた。加えて、この国を何とかしてより良くしていきたいという強い思いがひしひしと伝わってきた。本は知識を蓄え、興味を突き詰めていくことができる媒体であり、個人が自分を磨き、集まることで国が豊かになっていくという考えを示され、心を打たれた。この国の発展を前に進めるあと押しが、少しでもできたらいい」
4月24日にオープンするカンボジア1号店は書店としては国内最大規模の広さ。これまでになかったライフスタイル提案型書店として、先行者利益を独占し、34年までに6店舗を展開する予定だ。すでに20店舗以上を展開している中国・台湾と異なり、東南アジアでは日本滞在経験のある富裕層を除いて、TSUTAYAのブランドはほぼ認知されていない。上本氏は「まったく違う市場と捉えている」と話す。
本を購入する手段としてはECとも競合するように思えるが、「物流網が整備されていないため、リアルな書店の価値がまだまだ高いと分析している」と上本氏。カンボジアではイオンモールが出店したことによって人々の暮らしが変わり、「before AEON, after AEON」と言われることがあるという。上本氏は「われわれも文化や生活の面で、よい変化をもたらすことができれば」と、現地の暮らし向きを向上させるゲームチェンジャーとなることをねらう。

マレーシア、カンボジアに続く今後の東南アジアでの展開も、すでにいくつものオファーがあり、タイ、インドネシア、ベトナムが有力な候補としてあがっているそうだ。松下氏は「東南アジアと日本がお互いに文化を発信して交流するような展開をめざし、その架け橋になりたい」と話す。TSUTAYAのブランドがどこまで広がり、浸透していくか。注目が集まる。



