マレーシアにカンボジア……書店の海外展開を加速するTSUTAYAのねらいとは

吉牟田 祐司

衣食住が満たされれば、次は教育

TSUTAYAカンボジア1号店の外観イメージ
カンボジア1号店の外観イメージ

 カンボジアへの出店について、上本氏は「当初は過去の内戦のイメージが強かったものの、実際に現地を視察して好感触を持った」、松下氏は「自衛隊が初めてPKOで海外派遣された国で、地雷撤去やNGOによる小学校建設といったニュースが印象に残っていて、かつてはアジアの中で最貧国と位置付けられていた国。市場として成り立つのか心配だったが、リサーチして大きな可能性を感じた」と話す。

 「国内では米ドルがメーンで使用されており、国民の平均年齢は日本の半分程度。労働人口が増えてGDPは順調に伸び、所得が上がっている。市場としておもしろいと感じた。さらに調べていくと、国立図書館や大学図書館はあるものの、日本では区立や市立で当たり前のようにある公共図書館が見当たらなかった。大きめの書店は18年に紀伊国屋書店が出店したほか、イギリス資本の1店舗がある程度。あとは個人経営の小さな書店ばかりで、本に触れられる場所が少ない。その一方、都市部を中心に生活は豊かになりつつある。衣食住が満たされ、教育にお金をかけるフェーズに入っている」(松下氏)

 23年11月時点でカンボジアの平均年齢は24.5歳。子どもと高齢者を合わせた人数よりも労働力人口が多い”人口ボーナス期”にある。首都・プノンペンを中心にインターナショナルスクールが急速に増えており、とくに英語教育の熱が高まっているが、松下氏によると「子どもたちが興味を持つ、絵本や伝記などを買える場所がほとんどない。そういった市場でチャレンジしてみるのは魅力的だと感じた」という。

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