職人に寄り添い続ける専門店 信頼関係の構築を徹底する
顧客の子供の名前も覚える
道具屋が強みとしているのはこうした商品力だけではない。接客も顧客から信頼を得ている要因の1つだ。従業員が顧客と親身に向き合い、信頼関係を築くことを徹底しており、顧客だけでなく、その子供の名前も覚えるほどだ。
接客に力を入れるのは「日本中の職人さんが道具屋のことを知っていて、お客さまとして一度は道具屋に来たことがある、そんな店にしたい」という思いが鈴木社長にあるからだ。そのために重要視するのが接客なのである。
80坪の店舗で従業員は3〜4人で、社員とパートタイマーはほぼ半々だが、社員であろうとパートタイマーであろうと、接客の重要性は共有されている。道具屋ならではと言えるのは、接客のレベルを維持するために各店舗の若手社員1人が集まりチームを組んで全店舗への接客指導を行っていることだ。これは経営の指示によるものではなく、チームによる自発的な活動だという。
人材育成にも注力する。とりわけ接客に力を入れるだけに、人材育成は競争上も重要な施策となる。従業員が接客に十分な時間を割けるように、それ以外の業務はシステムを活用し効率化・合理化を図ることで人材育成につなげる。また、全体として職人は減少しているが、一方で外国人の職人が増える傾向にあるため、外国人の従業員を配置するといった対応も行っている。
M&A・提携も視野に拡大
ここ数年、力を入れているのがシステム活用だ。
「以前のように商品を並べれば売れる時代ではなくなってきた。お客さまの所得の伸びも鈍化し、価格も上昇傾向にあるなか、購入できる量も決まっている」(鈴木社長)。
そんななかでは、顧客の求めるものを的確に揃えることが必要になる。そのために注力しているのがシステム活用なのである。
現在、運用中のPOSシステムを軸に、そこから得られるデータを使って販売分析や出店分析、発注管理などを行っており、売場づくりや店舗運営をサポートしている。自社アプリとも連携しており、顧客管理にも生かしている。
「多店舗展開をしていると在庫量が増える問題がある。この問題を解決するのにシステムは有効だ。同業他社の先を行く、当社のアドバンテージになっている」(同)。
デジタル施策にも力を入れている。ネット販売については、20年以上前に開始したが、当時は売ることに躍起になるあまり、売上は伸び悩んだ。そんな反省もあり、今は物販というより顧客に情報を提供するツールという位置づけにしている。このほか、インスタグラムを活用し、各店舗の従業員が面白い商品、興味のある商品などをアップロードしており、職人の間に広く認知されるようになった商品もあるという。これも、顧客に商品を提案する情報発信の場になっている。
「同業他社と価格競争するよりも、他社が持っていない、あるいは持っていても情報発信できずによさが伝わっていない商品を道具屋なりの表現で載せているのがわれわれのホームページだ」と鈴木社長は話す。
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「われわれは職人を守ってきたという自負がある。今以上によい接客ができて、安心して来店してもらえる店をつくっていかなければならない。日本建築やその技術は日本を代表する文化の1つ。それを継承する職人を支援していくのがわれわれの使命だ」(同)。
職人に寄り添う姿勢を貫く國貞だが、今後の成長に向けてM&A(合併・買収)や提携についても前向きに検討していきたいという。同業他社と組んでシステムを共有することでシステム運用コストを低減し、データ活用や業務効率化に生かせる効果が期待できるからだ。同業と手を組むことも道具屋として重要な選択肢となっていきそうだ。
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