JA全農たまご 代表取締役社長 小島 勝
卵の集荷から物流、企画提案まで、フルラインアップの強みを生かす!

2017/08/01 00:00
聞き手=下田健司 構成=明知真理子
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2005年、全国農業協同組合連合会(全農)の鶏卵販売事業のすべてを移管し、設立されたJA全農たまご(東京都)。全国の営業・物流拠点、生産者とのネットワークを強みに、鶏卵市場でトップシェアを誇る。今年は新商品を積極投入し、さらなるシェアアップを図る。小島勝社長に経営戦略を聞いた。

伸長する卵生産量、約16%のトップシェア

JA全農たまご 代表取締役社長 小島 勝
小島 勝(こじま・まさる)●1982年4月、全国農業協同組合連合会入会(福岡支所畜産生産部)。2011年1月、全農本所畜産総合対策部次長。16年6月、JA全農たまご常務取締役。同年11月、代表取締役社長就任

──JA全農たまごの鶏卵事業にはどのような特徴がありますか。

小島 われわれは全農の100%子会社で、全農グループの鶏卵事業を一手に引き受けています。大手ナショナルチェーン、有力リージョナルチェーン、生協、そして鶏卵専門の卸売業などのお客さまへの販売を通じて、日本の生産者の卵を全国の消費者にお届けしています。

 全国規模で事業を展開しているということもあり、当社の発表している鶏卵の取引価格は、農林水産省による「安定基準価格」の指標にも使われています。業界のリーディングカンパニーとして、鶏卵事業ではフルラインアップの機能を提供しています。

 フルラインアップというのは、集荷、物流、企画提案、卸、ブランディング、宣伝など、鶏卵に関するありとあらゆる機能です。これを流通業のお客さまに提供しています。われわれは全国の鶏卵生産者と取引しており、営業所や支店、物流センターも全国に設置しています。こうした全国にネットワークを持つ当社ならではの事業を展開できるのがいちばんの強みだと考えています。

──2016年をどのように振り返りますか。

小島 国内での卵の生産量は年間250万トン前後と言われています。農林水産省の統計によると16年の生産量は256万トンで、対前年比1.6%増と順調な伸びを示しています。われわれは40万トン前後を取り扱っており、約16%のシェアを占めています。

── 生産量が伸びた要因をどのように見ていますか。

小島 1つは家庭での卵の消費の伸びです。理由として考えられるのは、一昨年に厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」が改定され、コレステロールの摂取基準値が変わったことです。卵はコレステロールが多く含まれるため、これまで1日1個が適量とされていましたが、コレステロールは体内で常に一定に保たれるように調節されており、1日に2個以上食べても、脳卒中や心臓病に影響はないといわれています。こうしたこともあって、家庭での消費は確実に伸びており、1人当たりの年間消費量は約10kgに達しています。今年5月の消費量も前年同月を上回りました。このほか、総菜やスイーツなど中食分野での業務需要の伸びもあります。

 もう1つは価格の安定です。牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵といった動物性たんぱく質を含む食材の中で、牛・豚・鶏はすべてこの1、2年のあいだで価格が上がってきています。しかし鶏卵については、多少上昇傾向にはあるものの安定しています。国内で供給できる動物性たんぱく質を摂取できる食材として、手頃な価格を維持できているのです。

──卵は物価の優等生と言われます。価格が安定している理由は何ですか。

小島 生産性が向上していることです。たとえば以前は、鶏が1年間に産む卵の平均数は250個ほどでしたが、今や300個超にまで上がっています。鶏の健康を維持する飼養管理、衛生管理、そして育種改良という技術革新により、鶏種の性能が飛躍的によくなっています。これが大きな要因です。

 物価の優等生とひとことで言いますが、その陰には生産者の大きな努力があります。飼料の価格に関しても非常にシビアです。だからこそわれわれは、ウィン・ウィンの関係になれるような提案を生産者にしなくてはいけないし、流通業にもそんな提案をしていきたいと考えています。

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