データの分析・活用だけでなく顧客との「ハイタッチ」を重視する=全日本食品 平野 実 社長
効率化の先にある顧客との触れ合い
──今後の経営課題は何ですか。
平野 本部施策を徹底させていくことが大きな課題です。本部施策を徹底している店舗は成績がよく、徹底していない店舗の成績はよくないことが明らかになってきています。実際、本部施策を徹底している店舗の売上高は毎月、対前年比105%程度で推移しています。
加盟店には、売価設定をはじめとした本部施策を守ってほしいと考えています。全日食チェーンは全体で3300億円規模の売上高があります。商品施策を徹底すれば、大手チェーンに負けない販売力をもっているのです。
もちろん、VCという性格上、レギュラーチェーンやフランチャイズチェーンのような徹底力がないのは事実です。けれども、それを言い訳にせず、各店舗へ本部施策の導入を促し続けたいと考えています。全日食では全国の支店に総勢約100人のスーパーバイザー(SV)を配置し、各店舗への指導を行っています。また、本部と各SVの間では、毎週TV会議を通じて意思疎通を密に図っています。店舗の清掃をはじめとした基本的なサービスレベルを向上させていくことにも、しっかりと取り組んでいきたいと思っています。
ただ、売価設定やデータに基づくマーケティング、自動発注システムを基盤としながらも、最終的にはお客さまとのふれあいが何よりも大事だと考えています。米国のSMを視察した際、お客さまとの接点を重視している地域SMは元気がいいと実感しました。
いくらビッグデータの分析力がすぐれていても、最終的に商品を買ってくださるのは「人」ですから、売る「人」に感情の面で良い印象を持ってもらわなければ、次に来店していただけません。あなたのための特別なサービスを提示したうえで、フレンドリーな会話ができる、そういう店舗が最終的に選ばれると考えています。全日食では、このようなお客さまとの心の触れ合いを「ハイタッチ」と呼んで、実行すべき施策の大きな柱の1つに位置づけています。
──少子高齢化、人口減少と社会構造が大きく変化しています。どう対応しますか。
平野 これからは「御用聞き」のようなサービスの導入も視野に入れています。地域に密着した全日食チェーンの加盟店の従業員が、家を訪ねてくれたら非常に心強いと思います。もちろん採算ベースに乗せるのは難しいという現実はありますが、店舗には地域のライフラインとしての役割がますます求められています。われわれが取り組むべきサービスだと考えています。
そのためにも、本部では発注システムやPOS、情報提供方法など店舗を支援するリテールサポートを強化することによって、店舗での作業負担を軽減し、店舗では接客や配達、地域づくりといった価値の提供へより注力できるような態勢を整えていきたいと思います。
今後、少子高齢化が進み、買物難民や買物弱者がますます増えるでしょう。そのなかで、全日食チェーンの店舗がどのような店舗をめざすべきか。それについて今年、本部のこれからを担う30代や40代の若い世代を中心に、店頭、情報化、商品、サプライチェーン、本部体制の5つの柱から全日食チェーンの10年後のあるべき姿を考えてもらいました。そこでの議論を通じて、全日食チェーンの各店舗が生き残り、地域商業の灯をともし続け、地域のお客さまに毎日の食材と当たり前の食生活を提供し続けることが、われわれの使命であることを再確認しました。
そのために、さまざまな施策を実行に移しているところです。厳しい環境ではありますが、全日食チェーンの未来は明るいと断言できます。