製造小売化で独自のポジション築きたい=マックスバリュ九州 佐々木 勉 社長
都市型小型店を開発
──新しい商品、売場は、既存店へどのように波及させますか。
佐々木 改装に力を入れ、新しい店づくりを店舗網全体に広げます。年間、既存店の20%にあたる30店をリニューアルし、5年間で全店舗の手入れを完了させます。
現在、行っている改装は、主にデリカ売場を拡大しています。好評を得ている「おかずバイキング」を設け、他店にはない店づくりで差別化を図っています。
伸長カテゴリーである冷凍食品売場の導入も重要なポイントです。地域特性に応じ、素材やおかずなど特化するカテゴリーを判断しながら、強化しています。
このほか施設の規模など条件を見極め、店内で購入した食品を食べられるイートインコーナーも設置します。
──そのノウハウを生かせば、新SMフォーマットも開発できそうですね。
佐々木 実は現在、検討しているところです。「おかずバイキング」などデリカ部門を中心に、飲食機能を付加した都市部向けの小型SMを構想しています。カフェを併設したり、総菜をテイクアウトできたりといった、幅広いバリエーションで新たなニーズに応えることができればと思います。
それに伴って、今後はドミナント化の手法も見直す必要があります。消費者の視点に立ち、より利便性が高く、魅力的な店舗網の構築をめざします。
店が集中しているエリアでは、半径2km圏に3~4店があるケースも珍しくありません。そのような場合、商圏特性を見て「マックスバリュ」から「ザ・ビッグ」に転換することを含め、思い切って店舗の配置を変更する可能性があります。
ローコスト運営をねらった効率的な店舗配置も大きな課題です。たとえば、ひとつの店が製造拠点となり、その周辺にある店に商品を供給するといった、いわば母店を中心とする態勢も考えます。同時に、物流の見直しや、プライベートブランド(PB)「トップバリュ」の取り扱い拡大などを通じ、確実に利益を確保できる店舗網を再構築します。
16年末には200店を達成
──効率的な店舗運営も重要施策と聞いていますが、イオングループとしての取り組みはありますか。
佐々木 今のところ、ダイエーの店舗のうちSMは当社、GMS(総合スーパー)はイオン九州(福岡県/柴田祐司社長)が運営を担当する方向で調整が進むと思われます。実現すれば、同じイオングループとして、後方の体制をどれだけ一本化するかが効率化の重要なカギになるでしょう。
現状、2社ともに総務部門など共通の部署がありますので、それらのうち、まとめられる部分は統合するほか、自前で持つ必要のない機能はアウトソーシングすることも選択肢に入るでしょう。ムダを排除することが、DSやDgSに対抗するための原資になるはずです。
──九州のマーケットは競争が激しいうえ、人口減少が進行しています。店舗のローコスト運営は不可欠な要素です。
佐々木 とくに福岡都市圏以外の地域は、急速に人口が減少していくのは間違いなく、それに応じたビジネスを考えなければならないと感じています。
イオングループが掲げる戦略のひとつ「大都市シフト」に基づき、都市部や駅周辺エリアを重視しながらも、新たな戦略を練っていきます。
ひとつは、店から遠いエリア、また店を利用しづらい環境にある方に対し、商品をお届けするサービスは提供しなければならないでしょう。現在、一部の店舗で3000円以上お買い上げの方を対象に、無料配達を実施しており、今後は各地の状況に応じて拡大を検討していきます。
──経営環境は厳しさを増していますが、製造小売業への取り組みにより、ビジネスの新たな展開が期待できます。
佐々木 現在のペースで出店を続け、さらにダイエーの一部の店などが加わるとなると、16年末には店数が200店を超える可能性があります。今後、店舗数は着実に拡大しますが、業態の壁を越えた競争が激しい九州マーケットでは、ダントツでナンバーワンのシェアを獲得するのはまだ難しく、県単位では今と状況は変化しません。とはいえ、企業規模の拡大に伴ってさらなるスケールメリットが生じ、新たなチャレンジもできるようになるでしょう。
九州マーケットにおいて、独自のポジションを築き、消費者の強い支持を獲得できるよう、スピード感のある経営を実践していく所存です。