小売業がデジタルマーケティングより先に始めたい!「デジタル時代のマーケティング」とは
デジタルマーケティングでなく、「デジタル時代のマーケティング」と捉える
小売の場合は商品の特性上、こうした人格を投影した消費者とのコミュニケーションは簡単でないが、やり方はあるという。菅原氏が提案するのが、「GIVE」の徹底だ。
「小売業ではないですが、例えば警視庁は、防犯に役立つ情報をツイッターで淡々と発信。弁護士ドットコムは、弁護士がトラブルの解決策をサイト上で公開しています。両者ともそれぞれの強みを生かし、困っている人へ有益な情報を提供することで支持されている。こうした視点なら小売でも活路を見いだせるはずです。これをデジタルマーケティングというと少し違和感があるかもしれませんが、『デジタル時代のマーケティング』と捉えればしっくりするのでは」と菅原氏は、見直しのポイントを解説する。
菅原氏はさらに、その運用において各SNSの特性を見極めた使い分けも重要と補足。「テキスト情報はツイッター、画像ならインスタグラムが相性はいい。よりしっかりとメッセージを伝えるならnoteという選択肢もある。それらを自社の商品特性や発信内容を考慮して使いわけることで、メッセージがより適確に伝わります」とアドバイス。その上で、菅原氏は2021年にデジタルマーケティングを効果的に行うための心構えを次のように説く。
「近年はデジタルマーケティングといえばDX(デジタルトランスフォーメーション)という潮流です。しかし、『人』を介したマーケティングがコロナ禍で成果を出しています。こんな時だからこそ原点に立ち戻り、経営哲学やビジョンついて改めて考え、企業として消費者とどういうスタンスで接していくのかを洗い直してみることが大切です。そうすることで、コロナ禍でもブレない情報発信が可能になり、それが自ずと企業の人格としてにじみ出ることになる。AI活用やマーケティング・オートメーションの実装ももちろん大事ですが、まず本当にやるべきことを選別し、施策の優先順位を明確にすることです」と菅原氏。
いまだコロナは終息が見通せないが、菅原氏は「ピンチをチャンスに」と訴えかけ、原点回帰を促す。2021年の小売業のV字回復は、古くて新しい、そして、やっていたつもりがやれていなかったSNS運用を軸にした深化したデジマがカギとなりそうだ。