サイゼリヤのアルバイトで星付きシェフが学んだ あえて客席を減らして人も増やさなかった理由

2020/10/09 05:59
レストラン ラッセ オーナーシェフ 村山太一
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戦略の本質は「何をやらないか選択すること」

 話を戻すと、客単価720円のサイゼリヤに2万円のラッセが全然及ばないんです。これは大問題です。作業の見直しや店のレイアウトを変えるぐらいでは、4000円の人時生産性の差は埋まりません。

 そもそもラッセのキッチンの狭さで24席をこなすことにムリがあるんじゃないかと、そのとき気づきました。一番生産性が上がるのはどれぐらいなのかを割り出すと、1618席がベストだとわかりました。

 席数を減らしたら、その分売上は落ちると普通なら考えます。だから、できるだけ多くの席を設けて、それに合わせてスタッフも増やすほうがいい。それが普通のレストランの考え方でしょう。

 でも、現に24席で10人以上のスタッフで回していても対応しきれずに、料理を出すのが遅れたりしてお客様を待たせてしまうこともありました。さらにスタッフを増やしたところで、キッチンがパンクするだけです。お客様の満足度を上げるためにも、席数を減らして、それ以上の売上を求めないことにしました。

 アメリカの経営学者のマイケル・ポーターは「戦略の本質は、何をやらないかを選択することだ」と語っています。その通りで、すべきことばかりに集中するんじゃなく、しないことをまず考えないと、生産性は上がりません。

 席数を減らすとスタッフの労働環境が劇的に改善し、サービスの質もよくなって、お客様の満足度も上がってきたと感じています。

サイゼリヤ本書影
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 さらに店の改革を始めてから、スタッフは海外に修業に行ったり、他の店に移るために辞めていきました。今までは辞めたスタッフの分を穴埋めするために、すぐに募集をかけていましたが、試しに人を増やさずに店を回してみたのです。

 3年前に9名いたスタッフは今、4名になっています。ぐんとコミュニケーションも取りやすくなり、店はくるくるとよくまわっています。それに、スタッフは4名でも、就業時間は8時~24時半から10時半~22時に改善。星付きレストランは、朝早くに出勤して終電までという勤務もざらですが、だいぶ普通のビジネスマンレベルにまで近づけることができました。

 にもかかわらず利益は過去最高を更新し、2019年の人時生産性は2018年比約37倍になりました。それに合わせて、スタッフの給料も15倍に上げました。一人一人が正しく努力すれば、自分たちの給料を上げられるんだということを証明できたと思います。

 やめる・減らすというのはネガティブなイメージがありますが、実はプラスに転じるための攻めの選択なのです。

 

10月9日同日公開、サイゼリヤ堀埜一成社長インタビューはコチラ:『強者はコロナでさらに強く!既存店売上が70%台でもサイゼリヤ堀埜一成社長が「楽しげ」な理由

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