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上場食品スーパー売上ランキング2020!熾烈なトップ争いを制したのは……

全国スーパーマーケット協会など3団体がまとめた食品スーパー(食品スーパー)の2019年の全店売上高は対前年比0.1%減の10兆7880億円だった。堅調な伸びを続けてきた食品スーパー市場だが、2011年に統計を取り始めて以来のマイナスとなった。上場食品スーパーの営業収益ランキングにはどのような変化があったのだろうか。

「コロナ特需」で快進撃続くスーパー

 2019年度の食品スーパー業界は、慢性的な人手不足、それに伴う賃金の上昇、物流コストの上昇など収益圧迫要因が目白押しで、利益面で苦戦した企業が目立った。加えて、食品を扱う手ごわいライバル、ドラッグストアの店舗数が増加し、競争が激化するというマイナス要因もあって、主要3団体が取りまとめた全店売上高は微減に転じている。

 ところが、20年3月あたりから新型コロナウイルスの感染拡大が表面化し、様相は一変している。緊急事態宣言が発令されたこともあって、外出自粛が本格化し、一気に巣篭もり消費が活発化。日常の食品を求め、消費者は食品スーパーに殺到したのは周知の通りだろう。

 このコロナ効果を発現し、食品スーパー各社の足元売上高は大きく伸長している。業界トップのライフコーポレーション(大阪府:以下、ライフ)の5月度の既存店売上高は、対前年同月比8.9%増、2位のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都:以下、U.S.M.H.)は同9.2%増、バローホールディングス(岐阜県:以下、バローHD)も同10・7%増といずれも2ケタ前後の伸び率を示している。

 競合相手であるドラッグストアの上位企業を見ても、同じように既存店月次で2ケタの伸び率を示すチェーンが多い。コロナによる「巣篭もり特需」で、消費者にとって身近な存在である食品スーパーとドラッグストアが瞬間的に潤っている状況といっていい。

 ただ、一連の特需は長続きするかどうかは不透明だ。いつまでも「3密」を回避する動きが続けば、ネットスーパーのようなECに実店舗の需要を奪われる可能性もある。20年度決算がどのような結果となるのかは現時点では見通せない。

売上トップはあの企業!

 食品スーパーの19年度の営業収益ランキングから上位各社の動向を追ってみよう。

図表●上場食品スーパー営業収益ランキング

 営業収益トップはライフだ。18年度は首位をU.S.M.Hに明け渡した同社だが、19年度は首位に返り咲いた。20年2月期の営業収益では対前期比2.3%増と手堅い伸びを示している。

 ライフは19年、ネットスーパー事業の強化策を相次いで打ち出した。19年4月に物流大手のセイノーホールディングスと子会社のベクトルワンと業務提携を締結、同年9月にはあのアマゾン ジャパン(東京都)と9月に業務提携を結び、「Prime Now(プライムナウ)」による販売を開始している。開始当初は23区の一部エリアでサービスを展開していたが、20年6月に東京23区にエリアを拡大。アマゾンと歩調を合わせ本格展開に乗り出す構えを見せている。

 2位はU.S.M.H。2020年2月期の営業収益は対前期比0.4%減と上位10位のなかで唯一の減収になった。傘下のカスミの本拠地である茨城県で競合のドラッグストアやディスカウントストアの出店が相次ぎ、競争が激化したことが響いた格好だ。

 3位はバローHDだ。同社の営業収益は同19・8%増と大きく伸びた。これは、ホームセンター大手のダイユー・リックHD(19年4月にアレンザHDに社名変更)を19年4月に連結子会社化した効果によるものだ。

 4位のマックスバリュ西日本(広島県)の営業収益も同97・5%増と大幅増収を果たした。同社は19年3月にイオン(千葉県)グループの食品スーパー、マルナカ(香川県)、山陽マルナカ(岡山県)を子会社化しており、増収はその連結効果によるもの。

 上位20位までで減収に陥ったのは、U.S.M.H.に加え、リテールパートナーズ(山口県)、ヤマザワ(山形県)の3社。19年度決算はおおむね増収基調だったと言えるが、業界全体としてはドラッグストアとの競合も響いており、楽観できない状況が続く。

 今年は前半の巣篭もりで貯めた“貯金”をどう維持できるかが焦点となる。特需で得た原資をどの領域に投資していくか。その判断次第で、企業間格差が拡大していく可能性もあるだろう。