第126回 SC運営の成否を決める顧客の滞在時間 “装置産業”としての役割とは何か
SCの役割=入館者数・滞在時間を増加させること
この連載では、SCのフロア担当や営業担当が店舗巡回をして何が売れていることを聞くことに疑問を投げかけてきた。それは、商品リスクを負うのはテナントだからだ。図表2にある通り、売れるか売れないかを確認するのはテナントの役割である。
それに対して、SCの役割責任は入店したテナントの売上と利益確保を支援することにある。では、その支援とは何か。それは「入館者数」と「滞在時間」の増加にほかならない。
| 図表2 SCとテナントのリスク負担 | ||
| SC | 項目 | テナント |
| 不動産業 | 業種 | 小売業、ほか |
| - | 商品リスク | ● |
| - | 在庫リスク | ● |
| - | 雇用リスク | ● |
| ● | 不動産リスク | - |
| ● | 空室リスク | - |
では、どうしたら滞在時間を伸ばすことができるのか。それは顧客に聞くしかない。顧客が何を求め、何に期待し、何に楽しさを感じているのか。それはその地域や商圏ごとに異なる。郊外立地の車客割合の高いSCと都心の駅ビルではそのニーズはまったく異なる。SCの勝手な思い込みで施設を造り込めば顧客は離れ、自分の必要な用事だけ済ませて帰ることになる。
顧客ニーズを滞在時間から探る
驚くことに入館者カウンターすら設置していないSCも多い。要するに入館者数を把握してないのである。これでは出店テナントに「最近、人来てないよね?」と言われた際、返答しようがない。もし、把握できていれば「いやいや、前年より10%増えているんですよ」と返すことができるだろう。
最近は、位置情報やカメラの性能が上がり、多種多様な捕捉が可能になった。それらを利用して、まずは現状を把握してほしい。もし、そういった方法がなければ「今日、いくら使いましたか」「今日、何時間いましたか」という店頭アンケートを一定のサンプル数の調査を年に一度行うことでもいい。とにかく、経年、継続的に推移を追うことが重要である。
SCは小売業ではない。出店したテナントが健全に営業を行うことをサポートする“装置産業”である。そのためにはどれだけテナントに売る機会を作るか、そこに尽きる。同じ1万人の来場者でも、1時間の滞在時間なら1万時間、これが2時間であれば2万時間と、消費力は増加する。人口減少の時代、SC運営者は自らのSCの滞在時間に目を向けるべきである。
西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役
小田原市商業戦略推進アドバイザー、SCアカデミー指導教授、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒
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