「りんごの合成皮革」で地域と地球を救う!? 青森発スタートアップの世界戦略

2025/07/14 05:00
吉牟田 祐司

地元の産業を守るため自社農園でのりんご栽培もスタート

appcycle自社農園
自社農園での作業の様子

 このようにappcycleでは「RINGO-TEX®」を素材とする商品を世の中に送り出し、社会実装しながら、製品化の領域を拡大してきた。地元のりんご産業を守るため、さらに一歩踏み込んで、自社農園「appcycle mirai farm」でりんごを栽培するプロジェクトもスタートさせた。売ることばかりを意識して、力を注ぐのでなく、土からのものづくりをしている。「私たちはものづくりはしているが、もの売りをしているわけではない」と藤巻氏は話す。取り組みの幅をさらに広げるためにIPOも計画し、資金調達や経営体制の強化など、着々と準備を進めている。

「原料の調達、原反の製造、プロダクト開発、販売・流通まで、すべてにストーリーがある。サプライチェーン全体をつなぎ、理想的なバリューチェーンを構築したい。そうすることで経済の見える化を目指している。縫製の過程で出る端切れをムダにせず再利用するワークショップを開いたり、小学生に向けて食育を兼ねながら地域のりんご産業の歴史や伝統を伝えたりしている取り組みも含めて、地域密着でソーシャルインパクトをもたらしている。投資家の方にも、その点を評価してもらえていると思う」(藤巻氏)

 今後、力を注いでいく領域は3つ。家具、アパレル、雑貨だ。自動車のシートレザーとしての活用にも期待を寄せる。なぜなら従来の合皮は1~2年で加水分解を起こしてボロボロになってしまうが、「RINGO-TEX®」は4~5年は持つ。つまり従来品より耐久性が高いのだ。「しかし逆の言い方をすれば、まだ4~5年しか使えない。10~20年耐えうる製品を開発し、品質面で優れた商品として、家具、アパレル、雑貨に展開していくことを、これからの1つの軸として考えている」と藤巻氏。理想とする完成度の7割に達する製品が、すでにできあがっているという。

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