「りんごの合成皮革」で地域と地球を救う!? 青森発スタートアップの世界戦略

2025/07/14 05:00
吉牟田 祐司

ANAの航空機に続き、弘前市を走る循環EVバスの座席に採用

りんごレザー
椅子の座面に使用された様子

 2024年11月には環境負荷低減への取り組みを積極推進し、「ゼロカーボンシティ」を宣言する弘前市と産業振興、農業振興、環境保全など10分野を対象とする包括連携協定を締結。2025年3月からは地域資源の循環モデルとして、座席シートカバーに「RINGO-TEX®」が使われた循環型EVバスが導入され、市内を走っている。

「これからは自社プロダクト、プライベートブランド(PB)での商品を展開し、原反も販売する」と藤巻氏。原反とは裁断などの加工が施されてないロール状の生地。つまり素材としての販売が開始される。合皮は基布、PU(ポリウレタン樹脂)、色、表面の4層が重なった構造になっており、現在は「RINGO-TEX®」、薄手で柔らかい「RINGO-TEX® BIO PVC」、そしてアップサイクル率をさらに高めた「RINGO-TEX® Ethical」の3種類を展開している。

RINGO-TEX®
RINGO-TEX®

 例えばりんご1トンがジュースに加工された場合、30%が絞られた後の残渣となる。年間2万トンが発生し、そのほとんどが焼却処分されてきた。捨てられ、燃やされるはずだったりんごの搾りかすを再利用してアップサイクル率74%の「RINGO-TEX®」にすれば廃棄物が減らせる。生まれ変わるのは、石油由来の原料を極力使用せず、開発・製造、加工、廃棄の工程でのCO2排出量も少ない環境配慮型の合成皮革だ。りんごだけでなくホタテ貝も原料に加えた「RINGO-TEX® Ethical」ではアップサイクル率はさらに高くなり74%を達成した。アニマルレザーではないため、動物愛護にも貢献する。有機物を原料にした合皮は強度が低くなりがちで、原反のブレも生じやすいという課題があるが、工夫を重ねて克服した。日本を代表する第三者試験・検査機関であるカケンテストセンターで測定して、品質にも確かな評価を獲得している。

「RINGO-TEX®」は2026年に青森県で開催される国民スポーツ大会(国スポ)と全国障がい者スポーツ大会(障スポ)で参加章の素材として使用されることになった。福祉の観点では、地元で不要となった消防ホースと「RINGO-TEX®」を縫製したトートバッグに障がい者が色付けするなど雇用の面でも地域貢献を果たしている。PBでは「RINGO-TEX® for Business」として名刺入れやIDケースなどの商品化を予定。子育て中の女性に向けた「RINGO-TEX® for Mama」を展開するためのサンプルづくりも進行中という。

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