「りんごの合成皮革」で地域と地球を救う!? 青森発スタートアップの世界戦略
故郷を元気にして、地球環境も守る。青森を本拠とするスタートアップ企業が社会課題の解決に挑み、事業展開を加速させている。廃棄りんごをアップサイクルしたエシカルな合成皮革『RINGO-TEX®』を開発するappcycleだ。どのようにビジネスを広げ、どのような未来を思い描いているのか。代表の藤巻圭氏に聞いた。
ジュースの絞りかすをエシカルな合成皮革「RINGO-TEX®」に

青森県にりんごの木が植えられたのは1875年。2025年は植栽150周年の節目だ。明治、大正、昭和、平成、令和と時代は移り変わり、現在のりんご生産量は年間約44万トン。日本一のりんご王国となり、全国の生産量の6割が青森県内で収穫されている。市場規模は1000億円以上で、加工・流通など周辺産業も含めると8000億円にもなるという。しかし年を追うごとに、農家の高齢化、労働力の不足、栽培面積の減少が見られ、りんごジュースなどに加工した後の残渣を処理する環境・費用面での負担も課題となっている。
その解決に挑んでいる会社がある。2022年創業、弘前市に本社を置くappcycleだ。東北大学発のスタートアップで、りんごの残渣をアップサイクルしたエシカルな合成皮革「RINGO-TEX®」を開発した。代表の藤巻圭氏は青森県の出身。美容業界でキャリアを築き、県外でサロン経営などを手がけていたが「人生の折り返し地点となる40歳までに青森に戻って仕事をしたい」と38歳でUターン起業した。
ヨーロッパにりんごを使ったヴィーガンレザーがあることを知り、調べてみると、皮革産業では動物愛護、環境保護、資源枯渇の問題などから、石油製品をリプレースするゲームチェンジが起きていたという。「これで地元・青森のりんご産業が抱える課題を解決できるとひらめき、点と点がつながった感覚があった」と藤巻氏は話す。皮革産業の知識などまったくない状態からのスタートだったが、まずは仮説を立てて開発プロセスを考え、東北大学と共同研究して開発することが決まったが、一番苦労したのは協業するパートナー探しだった。「全国規模で生産を委託できそうな工場を調べ上げて、電話を掛けたり、直接訪問したりする中で、ものづくりは、そんなに簡単にはできないと諭されることもあった。しかし、私も覚悟を持って創業している。なぜ青森なのか。なぜりんごでやるのか。青森への愛を伝えた。そして、転換期を迎えている業界で共存するために、敵対するのではなく、パートナーシップを組めないかと提案した」(藤巻氏)
思いに共感し、面白いと興味を持ってくれた大阪府の2社、埼玉県の1社が協力してくれることになり、製品化が可能になった。「RINGO-TEX®」は国産合成皮革として注目を集め、ANAの旅客機で座席のヘッドレストカバー、青森出身のタレント・王林氏がプロデュースするアパレルブランドのバッグとキャップ、TOKIOの城島茂氏と大手繊維商社の帝人フロンティアが共同開発したバッグに採用された。






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