PPIH、トライアルが社長交代へ 40代の若手トップは「長期的成長」をいかに実現するか
株式上場、西友買収……絶好のタイミングでトップ交代果たすトライアル

PPIHの社長交代発表の3日前、3月25日にはトライアルもトップ人事を発表している。4月1日付で、創業家出身の永田洋幸取締役が社長に、亀田晃一現社長は取締役副会長にそれぞれ就任する。
永田氏は42歳。トライアルグループの実質的な創業者である永田久男会長の長男で、09年に中核会社のトライアルカンパニー(福岡県)に入社、19年からはグループ傘下のリテールテック企業Retail AI(東京都)のCEOを務めている。
トライアルはここ数年、生鮮強化の取り組みと全国での積極的な出店、さらにスマートショッピングカート「Skip Cart」の展開をはじめとするリテールDX(デジタル・トランスフォーメーション)の取り組みなどにより、急速に存在感を拡大してきた。24年3月には東証グロース市場への新規上場を果たし、今月5日には西友(東京都)の買収を発表、国内小売市場に激震を走らせたばかりだ。
創業家出身ということもあり、永田氏がいずれトップに就任するであろうことは「関係者の間では公然の事実だった」(メーカー関係者)。新規上場、そして西友買収による売上規模1兆円の達成が確実になった今、まさに絶好のタイミングでのバトンタッチになったと言えるだろう。
ただし課されるミッションは易しいものではない。まずは西友との商品、システム、人材面などのスムーズな統合とシナジー創出、そして業績数値上は低迷が続くリテールAI事業のテコ入れなどが問われることになりそうだ。
永田氏は「社名のとおり、われわれはトライアルを繰り返して”経験知”を養ってきた。100年企業をめざし、今後も一歩一歩、リアルコマースを変えていく存在になっていきたい」と抱負を語った。
「長期ビジョン」を前提とした世代交代が小売市場に与える影響
PPIHもトライアルも、小売を取り巻く環境が大きく変わるなか、その変化に迅速に対応しながらビジネスモデルを進化させ続け、大きな成長を遂げてきた企業だ。
今やPPIHの売上高は2兆円を超え、トライアルの売上高も25年6月期に8000億円の予想、西友買収によって約1兆2000億円まで拡大する見込みである。業態に関わらず小売市場全体で見ても、大きな存在感と影響力を放つ企業であることは周知のとおりだ。
ただし2社に共通するのはそれだけではない。前出のように「100年、200年の繁栄」「100年企業の実現」といったフレーズを多用し、長期的なビジョンを確固たる意志のもとで描いている点でも似通っている。
そんな2社のトップに、決してサクセスストーリーばかりを歩んできたわけではない、だからこそ豊富な経験を持つ40代の若手が、奇しくもほぼ同じタイミングで就任する――。その成果が今後、どのようなかたちで表れることになるのか。2社の成長の行方からいっそう目が離せない。






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