過去3年で売上7倍超!家庭料理宅配「つくりおき.jp」とは
テクノロジーの力で効率を高める
手間がかかっているものの、家庭的で毎日食べても飽きない家庭の味をめざしたという「つくりおき.jp」。同サービスでは、週替わりで4人前(大人2名、子ども2名)×3食をまとめて届ける「週3食プラン」(1週間当たり9580円、税および送料込)、または4人前×5食の「週5食プラン」(同1万4980円)の2つのプランを用意している。
「お子さまにも食べもらいたいので、サービスに対するイメージの面からも保存料は不必要には使用しない。家族向けの人数×複数日分で単価を上げて配送費に対する売価を高くするかには知恵を絞った」と前島社長は話す。
1000レシピ以上もある総菜メニューの改廃やコンビネーション(組み合わせ)は、サービス開始前は人の判断に頼っていたが、現在は顧客満足、食材の原価、人件費の3つの変数を満たす組み合わせをAIが導き出した上で人がチェックしている。 原価と過去の作業データ、満足度はお客のアンケートや製造工程の工数などの蓄積されたデータを基に、品目ごとにかなりの精度で予測が可能になっているという。
これらのメニューを生み出す過程に加え、「たとえば人件費と食材費についても、メニューの組み合わせを決め、工程を分解し、人件費の効率や食材の効率を高める組み合わせなども技術介入の余地があると思う」と前島社長は期待する。「現在は一部メニューのセレクトをできる機能も検討中だ」として、リピート率向上に向けたテクノロジーの活用を今後も続けていく。
さらにAntwayでは製造工程にもテクノロジーを生かしている。「つくりおき.jp」で提供するメニューは、都内3カ所にある直営の専用キッチンで製造している。千差万別なメニューの製造に対応できるラインを構築するため、各キッチンでは動線設計にこだわっている。また、ベルトコンベヤーやフライヤー、金属探知機など調理に必要なさまざまな製造機械を設置しつつも、一部仕込みの工程で付加価値が高まるラインは、手作業で行うケースもあるという。
また、最新の調理機器を使用することで、デジタル制御が可能となり、数値管理による均一な味の再現性が確保でき、属人化しない仕組みがつくられている。そのため、パート社員でも約1カ月のトレーニングでさまざまな製造ノウハウが習得できるという。製造品質の確保と、人材育成の効率化が同時に達成できるライン設計を行っているのだ。
なお、Anwayでは昨年10月には串カツ田中(東京都)と業務提携し、今年5月に串カツ田中が「つくりおき.jp」の製造キッチンを東京都江東区潮見に開設している。
地域複合企業を含めFC事業を拡大
23年5月にスタートアップ企業への投資段階の一種であるシリーズ C ラウンドで約8.7億円を調達した同社は、その資金の活用先の一つとして提供エリア拡大のためのフランチャイズ化の推進を挙げている。串カツ田中との業務提携に加え、現在も複数社との事業準備を進めている。その中でもとくに力を入れているのが、協業先が地域に根差し、さまざまな業態を運営する「地域コングロマリット(複合企業)」との提携である。これにより、雇用や食材仕入れ・賃料によって地域経済に貢献しながらも、売上は地域の外から獲得できる、地域企業にとっての「外貨獲得」の手段にもなる。
ローカルエリアに拠点を置き、FC加盟店には、主に製造、集客、採用、食材発注を中心に担う。一方で、Antwayは、ブランディングやレシピ提供、採用サポート、研修実施、業務オペレーションの実装支援、お客様サポート対応等を担うという仕組みだ。EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)ベースの利益率は11%、面積当たりの売上高は160坪で年商13億円を収益モデルとして提示している。
地域コングロマリット企業の持つ潜在顧客とのリアル接点や、同社の持つ技術を融合し「全国でサービスを拡大、食だけにとどまらない家事や子育てにかかる義務の解消を実現していきたい」と前島社長は意欲的だ。
10年以内に売上高1000億円を達成し、「同サービスを食の世界的なブランドとして育てたい」(前島社長)という大きな目標を見据えて進む同社の動向を今後も注目していきたい。